87年リリースのアルバムである。彼の場合Soft Cellと並行してThe Mambasやってたり、それ以降もソロと言えばソロなんだけれどもバンドの名前がちゃんとあったりしていて、これはThe Willing Sinnersとのアルバムである。ソロ3枚目、と考えられるのかな。Virginからの最後のリリースとなった今作は誰が何と言おうと彼の最高傑作である。もうジャケからして炸裂しているが、内容も暗い輝きを持ったメランコリックな楽曲がぎゅうっと詰まった1枚である。ムード歌謡一歩手前的美メロを美声で、というと陳腐な感じがするやも知れぬがそれを高次元でやるとこうなる、という見本なわけだが、歌詞も含めて濃密に妖艶すぎて窒息しそうなくらい、である(誉め言葉)。タイトルはカポーティの作品から取られこのアルバム自体も彼に捧げられてて、最早ツッコミようがないくらいに完璧な世界観、ってやつである。無人島に持って行くレコードは?と聞かれたらこれ、って答えます。
Heavenly Bodies
先日、「最も空しく、哀しくなるウェブページ」ことタワレコのアウトレットコーナーを、あんなに焦って定価で買ったレコード群がこんな値段に・・・、と涙をこらえながら見ていたらたまたま買っていなかったこのアルバムを激安で発見したので、買って聴いている(たまには涙が乾くこともあるのだ)。オーストラリア出身のバンドのセカンドアルバムで、DAISレーベルからのリリースである。DAIS、Cold ShowersだのDeath Of LoversだのPrivate Worldだの、こういうバンド多くて(もっと言うとDrab MajestyとかVR Sexとかも)こんがらがったのでスルーしていたのだが、これが一発で「嗚呼、こういう音楽が私は好き・・・」と泡吹いて気絶する音である。80年代にポストパンクやらネオサイケやらゴスやらポジパンとか言われたバンドがどんどんメジャー化していって、結果、スケールのでかいUK版産業ロック一歩手前な音楽性になったりしていたわけだが、その成れの果ての音を今出している感じ、というまあ個人的にはたまらない名盤なのであるが果たして、アウトレットコーナーに初回のカラー盤で残っていたりするわけだから察し・・・、という感じもする。しかし本当に実はタイトなバンドサウンドに良い具合に力強いヴォーカル、今は2020年代なのか、と問わずにいられないサウンドとリフを奏でるギターに時にシンセ、時にサックスまで加わり、全9曲、隙のないアルバムである。でも一周回って(いや、3周くらいか)こういうのが新鮮に響く時代、でもあるのだろうか、と思うのであった。私はたぶんずーっと昔からずーっと未来まで、こういう音には反応し続けざるを得ないのだな、しかし・・・。
Happy Happy Happy
csgb Vol.87 2022年5月27日(金)20:00~@ Monet
入店: 2000yen(1D)
Guest DJ: Masaya Omote, GIN
DJ: shinshin, 5atoru, tdsgk
2年前に拡張再発された前作
の時は、遂に復活、みたいな感じで大興奮でしたなあ。しかしてその後「Soft Cellやると自分とDave Ballの良くない面が出てきてしまってやりづらい」的なMarc Almond様の発言もあってしばし何もなかったけれどもUKでの最後のライヴ、という2018年の公演と(しかし何事もなかったかのようにその後も普通にUKでもライヴしてるけど)その時期の新録とか箱とか色々あったから今回の新作もそれほど驚かず、出るべな、と思っていた1枚ではある。しかしそれでもこの名義では20年ぶり(!)って、復活作がついこの間のことと思っていたのに・・・。しかしやはりSoft Cell名義ではSoft Cellの音楽、になっているのである。ジャケのチェルノブイリ原発付近の廃墟となった遊園地からしてもう一気にその世界、なのであるが歌詞も皮肉、怒り、悲しみ、孤独、そしてダークなユーモア、というSoft Cellならではの展開の中に年齢を重ねたことによる新たな視点、というものまで加わって結構、ツラい。ツラいけれども、「発明」とも呼べた簡素な初期のバックトラックからかなり進歩を遂げてはいるけれども基本的に無機質なDave Ballのトラックに、より一層粘っこくなったMarc様の、若干低めにはなったけれども変わらぬ美声が絡まれば、またしても今一度、暗い快楽の園行きの特急列車が発車するのであった。いや、何言ってるかよくわからないと思うのですが、要は悪いわけがないのである。ちなみにフィジカルフォーマットはリリースが延びに延びて、その間に収録曲のPet Shop Boysをフィーチャーしたヴァージョンなんてのも生まれてしまってデジタル版ではその派手なシンセも入った共演ヴァージョンも聴ける。Soft CellとPSB、40年近く前のBronski BeatとMarc様の共演と同じくらい、ゲイディスコ界隈のみならずマジで夢の共演だなあ、と感涙に咽ぶのであった。
I'm Still Waiting For My Time
csgb Vol.87 2022年5月27日(金)20:00~@ Monet
入店: 2000yen(1D)
Guest DJ: Masaya Omote, GIN
DJ: shinshin, 5atoru, tdsgk
GINくん、そしてオモテさんが出ます!福井県は揚げ物の消費量が日本一、ということでそこらへんを福井出身のオモテさんに確認したりする夜にもなるかと。よろしくお願いいたします!
1989年リリースのコンピレーション、である。この間CD6枚組のボックス
を何故か買ってしまって今俄にまた盛り上がっているのであった。いや、確かに未発表とかいっぱい入ってるけどBiff Bang Pow、全部あるじゃん、というのについ、勢いで・・・。Biff Bang PowといえばCreationレーベル社長のAlan McGeeのバンド、なわけである。レーベルの社長がバンドやっててそれを自分のレーベルから出してて、って何てクールなのかしら、と当時から思っていたけれども、80年代のUKのインディバンドってこうだよな、という見本のようなサウンドでまあ、本当に最高である。89年はちょうどバンドの転換期、これ以降はAlan McGeeのソロみたいな感じになるので、バンドとしての彼らをまとめた好コンピ、である。既発と未発がまざったちょっと半端な印象は拭えないがレーベルもバンドもノっていた時期のドキュメントとして非常に良い。歌心、とでも呼べそうなものが充満した楽曲だらけで、これ以降の展開も勿論良かったけれども、それをタイトなギターバンドサウンドでやってるのがまた、良いんだよねえ、というダメな感想でまとめたい。しかし私、アナログで聴いているのだけれどもアナログはジャケが全部違うんだよね(CDは上のジャケ写)。そこら辺も何だかこのアルバムが愛おしい理由かも知れない、カビやすい材質で困るんだけれども・・・。
あとタイトルは別に音楽ジャンルの話ではなく、クスリの方への言及、らしいです。Creationは80年代末と90年代初頭のノってる時期はクスリの方もノってたみたいだからなあ、
この映画とか
この本でもめちゃくちゃ言われてたけど。
Anima
csgb Vol.87 2022年5月27日(金)20:00~@ Monet
入店: 2000yen(1D)
Guest DJ: Masaya Omote, GIN
DJ: shinshin, 5atoru, tdsgk
4月はcsgbはお休みしておりましたが、今月はあります。久々のGINくん、そして思えばAOBA NU NOISEのごく初期メンバーでもあったオモテさんが出ます。私は最近もうなんだかよくわからない音楽ばっかり聴いてるんですが(今に始まったことではないけれども)一度整理して臨みたいと思います、よろしくです!
2001年リリースのサード(なのかな)アルバムである。当時結構話題になっていて、(雑誌『FADER』あたりとかだったかな・・・)私もご多分に漏れずこのアルバムで初めて彼の音楽に触れたのであった。この後も八面六臂の大活躍で現在も本当に面白いリリースを続ける彼であるが、私、当時買ったCDは多分まだ持っているはずなのだけれども、今回はアナログで1曲追加だし、ということで久々に聴いている。CDだと62分で1曲、と言う感じなのだけれどもアナログでは3面に分けられていて、それがまた非常に新鮮で良い。ダブの影響が大きいエレクトロニカ、と言えるような緻密な音楽なのだが、同時にミュージックコンクレート的にランダムに音が並んでいるような側面もあって、ビートも何もかも、結構「割り切れない」音楽である。それをダブ的音像でまとめ上げた、ということで結構後にも先にもない感触は、アナログで聴いても全く変わらず、リリースから20年以上経っているけれどもめちゃ面白い。ボートラの、ダブマナーによる「Version」も、言葉にすると阿呆みたいだけれどもめちゃくちゃかっこいいので、今回の再発、ジャケも当時のままだし、嬉しい一発、であった。
Interference
Loopの新作、であるってLoopだよLoop!!!!!!!!!!!!!!!!!!と冷静さを失いそうになりながらいるのだが、32年ぶりの新作である。前作は高校に入学してすぐくらいのリリースだったなあ。
勿論Loop解散後、Robert HampsonはMain名義だったり個人名義だったりで、音響彫刻とも呼べるような深い深い音像の作品をたくさんリリースしてきてそれは本当に最高だったわけである(他メンバーの短命だったHair & Skin Trading Co.というバンドもあった)。2013年にLoopが復活して2015年にLoop名義でEPが出て
それからも大分時間が経っていて、オリジナルメンバーもRobert Hampsonしかいない(ブリストルのThe Headsのメンバーとかいるらしいけどメンバーのクレジットがよくわからないんだな)のだけれど、わくわくしながら針を落としてみたら展開の少ないヘヴィなギターリフに相変わらずの呪いのようなヴォーカル、というLoop節で震えるほど感動した。感動したが、今までのLoopと同じ、という感じではなく結構整理されスピード感があって、明らかに手触りは過去の諸作と違う(デジタルな処理が結構効いているのか)のに、この謎めいたヘヴィでサイケデリックな感じが健在で、おおやはり真髄を見せつけられている!という興奮をもたらす感動具合、であった。ってまあ性質の悪い愛好家のコメントで申し訳ないのであるが。しかし、某ディスクユニオンの夜割で中古品3%オフのタイミングがあれば夜な夜なLoopの諸作を検索しまくっていた人間なので、おわかりの通りLoopへの思いは決して冷めることなくずっと熱いままだったわけである。それに応えてくれるこの新作!ということでまあ泣いてます。
A Place We Once Walked
をいいね、とか言ってて盛り上がった。でもこれはめちゃくちゃ良いドキュメンタリー映画で、何故かというと全部を説明しないが故に、こちらが「わかった」という気持ちにならない。したがって自分で補完すべく聴いてみよう、いう気持ちにさせてくれるので、エドガー・ライト監督が良い仕事をした、と言えるであろう。あと字幕監修が岸野雄一さんなので完璧だった。
その後高校の同級生飲み、という名称も似つかわしくないような、振り返りとは無縁の現在進行形飲み会。主にトレーニングとレコードとBob DylanとMilli Vanilliと猫の話題など。帰り道歩いていたら、10年間履いた靴が、ソールがはがれ且つウェルトもブランブランになって崩壊。しばし呆然。最近12年間履いた靴もウェルトがブランブランになって崩壊したばかりなので、そういう時なのか。
しかし思えばこの日壊れた靴は円高の際にハワイの免税ショップで、まあ買えるな、という値段で買ったコール・ハーンのルナー・グランドなのだが、今もう買えない値段なんじゃないか、そもそも同じものももうないだろうし、と暗い気持ちに。
5月3日(火)
18年使っている冷蔵庫がある日壊れたら困る、という思いの元に家電量販店に下見に行く。あれ、我が家で使ってるサイズってこんなだったっけか・・・、と戸惑う、めちゃ高騰した冷蔵庫群に呆然。中古で買った俺の車の車両本体価格くらいじゃないか。
とか思いながら小籠包をお昼に食べていたら隣のテーブルに偶然Freetempoくんご一家がいて、久々の嬉しい再会。仙台ならでは。
帰りに生協に寄って、それから実家に行って母に色々渡したりとかして、夜は安くなっていたタコの刺身を使ってアヒージョ風鍋を作成して食す。キャベツを物凄い勢いで消費。
5月4日(水)
数日前からコンタクトレンズの調子がどうもおかしく、見えづらさも感じていた昨今だったので清水の舞台から飛び降りて新しいのを作ろうと今しているコンタクトレンズを作った店に行ったら、その店が眼科もろともなくなっていた。しばし呆然。
その後調べたら移転していてまあまあ近くに新しくできていたのだけれども、水曜日は併設の眼科が休みで新しくコンタクトレンズを作れない、ということが判明しさらにしばし呆然。しかし私ハードのコンタクトだからかなりルースに何年か1回新しく作る際にしかコンタクト屋さんとか行かないのだけれども、コンタクト生活25年で行ってみたらお店がなくなってた、という事態がもう4回目だな。
気を取り直してビールを土産に馴染みの古本・中古レコード屋に行ったら、お客さんとして来ていた私の元レコード店の同僚とこれまた嬉しい再会。聞けばあまりにも酒の事故がここ数年多かったので酒を辞めた、という。一方店主は既に酩酊状態で、コンビニに途中買い出しに行くも財布を忘れてそのまま戻ってきたり、そして同じことを何度も繰り返すミニマルモードになっていて、嗚呼酒には気をつけんとな、と気を引き締める。
5月5日(木)
と連休をふり返り、もう終わりか、と絶望モード。実はここまで書いていなかったが4月29日から既にあと何日後には連休終わっているのか、とずっと絶望はクレッシェンドしてきていたので、今日そのクレッシェンドがフォルテッシッシモまで高まっている、ということである。とくに行楽らしい行楽はしていなかったけれども、休みである、というだけでありがたかったものである。
しかし連休中も変なことしやがる連中は世界中にいて、とくにユーラシア大陸とか半島とかの奴らはなんかひどい目にあって目論見が挫折すれば良いのに、と切に願う。そして毎日朝テレビを観ていたのだけれども、なんか「こういうの面白いと思ってるんだろうな」とか「うるせえな」とか「何様じゃ」という感想が口をついて出るばかりで、本当にちょっと世の中どうかしている、のか私がどうかしている、のかずっと考えながらいた。まあ多分両方かな・・・。
あとセックスの面でもジェンダーの面でも「性」というものについて色々考える機会が多かった。(多分)男性として私はここまで生きてきたのだけれども、この国で男性として長く生きてきていると気づかなかっただけで、ちょっとどうかしているよな、ってことに気づかされることが多いんだよな、最近。
今日はコンタクトレンズを作らねば、という決意のもとRoger Enoの「The Turning Year」を聴く。
お兄さんのBrianとの共作
に続いてDeutsche Grammophonからの新作、である。お兄様に関してはかなりヘヴィに私は大好きだけれども、弟さんに関してはAll Saintsレーベルからの作品とか、あまり心惹かれなかったな・・・、でも「Voices」
とかは確かに昨年よく聴いてたな、というライトな愛好家である私であるが、今作はピアノとストリングス等のシンプルな作風ですごく良い。どちらかというとかなりRoger Enoの音楽って抒情的で、それがちょっとトゥーマッチだな、と個人的に感じる時があったのだけれども、今作は空間が結構あって、心底リラックスできるような、そういう音楽である。彼の持ち味の抒情的な感じもちょうどよく、ずーっとひたすら繰り返して聴いていても飽きない。故にここ最近毎晩ずっと聴いているのであった。