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ところでこの間新聞を読んでいたら、何か世帯アンケートみたいなものの結果が載っていたのだった。

まあ、この不景気がどうこう、という実にダウナーなコメントが付いて紹介されていたものだが、そこには「もやしなどを積極的に使って食費を抑える工夫が・・・」とか書いてあったのである。

だから、もやしを安いからって、妥協策の必殺技、みたいな書き方はやめろ、と言いたいのである私は。どうせそういう風にしかもやしを捉えられない輩は後々、何かの弾みで財政的に豊かになったら、もうもやしのことなぞすっかり忘れてしまうに違いない。そういう連中がもやしをため息まじりに買って行ったりする光景を夢想するだけで何か猛烈な怒りを覚えるものである。

まあ何が言いたいかと言うと、近所の生協でもやしが売り切れで(!)買えなかった今日の怒りをそういう輩、私の仮想敵に向けてぶつけます、という私のマニフェストを皆さんと共有したい、ということなのである。物心ついた時からもやし大好きっ子の私としては、真のもやしラヴァーを侮辱するような昨今の風潮は何とも受け入れがたいのであった。

まあこの時代にもやしの魅力に気づいて、今後も価格のこととか抜きにしてもやしを愛する人々が増えるのならば、今のこの時代の流れを私は甘んじて受け入れようとは思うのだが。要は遊びでもやしと付き合っていたらバチがあたる、ということを認識してもらいたいものである。

ちなみにもやしを使った好きなメニューはナムルともやし鍋です、よろしく。と自己PRしたところでThe XXの「The XX」を聴く。平均年齢20歳を切るUKの新人バンドのデビュー作である。いや、もうこの歳になると積極的には新しいバンドを追わなくても良いよなあ、とか思ったりもするわけである。裏切られることも多かったわけだし。しかしこういうアルバムに出会っちゃうとやっぱり積極的にいかなきゃ駄目なんじゃないのか、と盛り上がってしまうから厄介である。打ち込みとギターとベースとキーボード、という編成で男女ヴォーカルなのであるが、この男女ヴォーカルの2人ともちゃんとご飯食べてるのか、と思わず問いかけたくなるような囁き気味のデュエットがまず印象的である。しかも結構複雑な絡み方をしたりしていて、これだけでこのバンドの特徴を作り上げているのだが、全体を霞のかかった世界にしているギターサウンドもまた、シューゲイザーな感じとは一味違う、甘く、そして軽めなサイケデリック感を醸し出していて良い雰囲気である。メロディもパッと聴いた感じでは淡々としているのだけれども、それ故に味わい深くじわりじわりと来るのであった。全体としては実に抑制が効きまくっていて若いのに大層不気味なのだが、不気味と言えばこの打ち込みのセンスの良さも不気味である。打ち込みですよー、ということを決して声高には主張していないのだが、かといって生ドラムっぽくしてみましたー、的な安易な方向にも流れていない。大抵ビート練りすぎて変なミクスチャーみたいな曲がアルバム内に存在してしまうものであるが、それが一切ない。なのに、決してチープだったりしないボトムのどっしりした感じは大層新鮮である。まあ、新人なのに皆暗い瞳してそうなところが一番好感が持てそうなところなのだが。なんか、Young Marble Giantsをアップデートして男性ヴォーカルも入れたような、そういう感じすらしてくる充実のデビュー作。願わくば、このまますくすくと続いていって欲しいものである。