Bread & Circus

私の祖母が数え100歳で亡くなったのでちょっと喪に服しております。

しかし祖母がここまで長生きすると、人間って死なないんじゃないか、という思いが知らず知らずのうちに強まっていたようで、意外にショックだった。これは若くして亡くなった、ということから受ける鋭利なショックとはまた違って、鈍いショックである。

でも、忌引きのお陰で久々にちょっとゆっくりとしたペースで過ごせたりしてしまって、何だか不思議な気持ちなんだけどばあちゃん、ありがとう、という思いがこみ上げて来たりしたのだった。

そういえば昔祖母が手紙に「他人のお世話になってしか生きれず、長生きは酷です」という言葉を書いて来たりしていたのを思い出せば、何だかもしかしたら彼女は今はホッとしているのかも知れない、という思いになったりして、今回の祖母の死は今までの誰の死ともまた違った思いで受け止めている自分がいたりする。不思議なものだ。これは別に歳をとった、とかそういうこととは関係ないんだと思う。

と内省しながら、Marc Almondの「Variete」を聴く。カヴァー集でなく、オリジナル曲でまとめられたアルバムとしては「Stranger Things」Stranger Things以来かなり久々な作品であるが、同時に彼はこれを最後のオリジナルアルバムにする、という私としては信じたくない発言も前々からあったりする。しかし、どうも何か引退、というのとは違う感じなのでちょっと嬉しい。まあ、1990年の「もう過去の曲はやらない」というDavid Bowie然り、解散とか活動休止とか、全部後々考えてみるとどうでもよかったんだなあ、というのがロックンロールの歴史に囚われた私としては素直な感想なのである。だからもっと大局的な見地に立たないとなあ、と私は思うのだがそこらへんに関して世の中にはナイーヴで且つ攻撃的な人間もいるようで、全くやりきれない。あ、話が逸れたが、Marc様の場合、本当にロックンロールの歴史に則って、発言撤回してこれからもそのオリジナル作品を聴かせてもらいたい、と心から思うのだ。この久々のオリジナルアルバムは確かに歌詞に関しては懐古的なモードがあったりして、ちょっとファンとしてはやはり最後のオリジナルアルバムなのか、という思いも確かに頭をもたげてくるものであるが、それすらもアルバムを聴く際のスリリングで素敵な要素としてこちらに用意してくれるMarc様の粋なはからいにはやられっぱなしである、ってキモいファンだな自分。音楽的には生音が中心になっていて、オリジナル曲のアルバムとしては大分久々な(80年代中期以来、とか)感じである。でも哀愁のメロディは全編これでもか、と轟きまくっているが、それが濃密な息苦しさになっていないところがやはり大人の余裕、というものだろうか。そう、エンターテイナー、もしくは歌い手としての余裕、もしくは良い意味でのユルさが感じられるアルバムなのである。今までなかったなあ、こういうの。そしてタイトル通り、意外に音的にも生音中心ながらもヴァラエティ豊かでエレクトリックギターとアクースティックギターの絡みが広がりを感じさせてくれるナンバーとか、彼のこれまでのキャリアの中でもなかったよなあ、という新境地があったりするからまだまだ引退している場合ではないですよ!と言いたくもなる。バックも最早長い付き合いのSigue Sigue SputnikのNeil Xがいたり、そしてドラムスとかパーカッション担当のDavid RuffyってあのAztec Cameraの彼?という布陣だったりして充実度はこの上ない。また限定でアクースティックライヴ(あんましアクースティックな感じしないのだが・・・)でアルバムと全く曲がかぶらないボーナスディスクがついていたり、とまだまだやっぱり続けてほしいものである。メジャーデビュー30周年ツアーとかもあるみたいで、これは今年、自分UKに行かなきゃないか、とか思ったりしたが、それくらい冷静さを失わせてくれる男(ひと)ってのもなかなかいないよのう・・・。

えっと、単なる性質の悪いファンの長文、失礼いたしました。