Painted Eyes

ところで我が街仙台に「喫茶ホルン」という良い感じの喫茶店が最近オープンしたのである。というか、知り合いのyumbo澁谷さんとナツさん夫妻のお店なのだが、それはもう身内びいきを抜きにしても凄くなんだか落ち着くお店なのである。私が引っ越して仙台の中心部から離れたところで生活するようになってから、街中をぶらりとして喫茶店にでも、とかそういうことを嗜むのも大分少なくなってしまったのだけれども、ここができたからむしろここメインで行こうか、と思うくらいである。

まずこじんまりとした店構えは、狭すぎず広すぎず、で落ち着いた木の調度品と床の感じと相まって何故かホッとする。しかしそこに水色が入ったりすることでアクセントになっていて重厚にならず、軽快である。そして音が良い。それはかかっている音楽、ということではなく(いや、それも当然間違いないのだけれども)どこの席に座っても凄くはっきりとした音で音楽が聴こえる。しかも疲れさせたり聴こえづらかったりとかそういう音ではなく、すっきりとした、疲れない音で聴こえる。

で、そういう周辺の情報はさておき、カレーとコーヒーがメインの店である。しかしカレーは「喫茶店のカレー」という世界ではなく「南インドカレー」と銘打つだけあって、カレーってスパイスの集合体なんだなあ、ということをしみじみ思い起こされる本格派の深い味である。コーヒーもフレンチプレス式で淹れられ(と知っている人っぽく書いているが、初耳であった。思えば澁谷さんとはフレンチプレス、と言ってもやれOn-Uだ、とかCherry Redだ、とかレコードのプレスの話しかしたことなかったしな・・・)、香り高く美味しい。

とは言え、カレーもコーヒーも完全に本格的なのに決して重厚でなく、もたれない。あっさりとした味わいである。それでいて味わい深いのである。そう、味のみならず、このお店の何よりも素晴らしい点は、そのさり気なさである。本当は物凄く大変なことをやっているはずなのに、それをドヤ顔で全面展開するのではなく、あくまでこじんまりとさり気なくさらりと、というその感じは味にも良く表れていて私は感動するのだ。

まあ、完全に私の思いこみというか妄想なのかも知れないけれども、こんなエグいことばっかりの世の中(←と大ナタでざっくりと一般化)でホッとさせられるような場所がまた新たに出来たことを心から嬉しく思うのだった。大体、場所がせんだいメディアテークの真向かい、という立地なのにまさにリアル隠れ家的空気感、ということからも稀有なお店である。今日も今日とて扉を開けるなりLeonard Cohenの美低音ヴォイスが聴こえてきて、なんだか一気に喫茶ホルンの空気に染められたものである。

ということで仙台にお住まいの方は是非、そしてたまたま仙台にいらした方も是非、一度足を運んでそのさりげない深さを体験すると良いと思う。そして蛇足ながら、これはここで言わなくても良いことかも知れないけれどどさくさに紛れて言ってしまえば、それはもしかしたらyumboの音楽にも通じる魅力かも知れないな、とか思ったりもしたのでyumboの音楽が好きな人も気に入る場所なのではないかなあ。

なんか私の拙い言葉で魅力が伝わっていれば幸いなのだが・・・。まあ、Hercules & Love Affairの「Blue Songs」を聴こう。ディスコ〜ハウスユニットの新作である。蛇足ながらかなりゲイのり、というか・・・。で、前作Hercules & Love AffairはAntonyが参加だわDFAからのリリースだわ、ということで12インチの時点からかなり盛り上がったのだが、今作はDFAを離れ、Moshi Moshiからのリリースである。Bloc Partyのヴォーカルは参加しているが、Antonyは参加していない。で、なんだか世の中的には賛否両論な勢いなのだけれども、今作は私はかなり好きである。下手したら前作よりも好きかも知れない、トータルとしては。まずは前作からも感じられたが80年代後期〜90年代初期のハウス、というかエレポップ、の色が濃くなっている。前作の濃厚な作風の中では何だか見えにくかったような気がするのだが、実はPet Shop Boysみたいな感じなのかな、という感じが今作を聴いていたら閃いたのだった。まあ、それはアルバムを最後まで聴いてPet Shop Boysヴァージョンの「It's Alright」のしっとりとしたカヴァーが出て来るに至って確信に変わったのだけれども。ストリングスやホーンをあしらったゴージャスなディスコナンバーでも「Blue Monday」の恰幅の良いヴァージョンみたいに聴こえたりするし。それでも全体として隙間を生かしたすっきりとした音づくりに変わっているのがわかるので、ここら辺が好き嫌いが分かれるところなのかも知れない。まあちょっとペース的にはどうかな、とか思うバラードがあったりもするのだけれども、全体を覆うこの柔らかく優しい、包み込むような感じは今の私にしっくり来るので鬼聴きしている次第である。と言うかですね、中の写真見るとメンバーがMeat Beat ManifestoとかNapalm DeathのTシャツ着ているわけで、気合いを感じる、というか嫌いになんかなれない、というか・・・。そしてクレジットを見たら、思いっきりPatrick Pulsingerが共同プロデュースで参加していて、このどことなく隙間のある音の感じはこの人のせいもあるのかな、と。