Going Home

定期的に話題にしている宮城県ローカルスーパーマーケット「つかさ屋」であるが、今日も今日とて店外では炭火で焼く焼き鳥の香ばしい匂いが溢れ、何故かいつも寒い店内では狂ったBGMが流れていたので安心だ。

どういう狂い方かと言うとまず"Weird Al" YankovicによるMichael Jacksonのパロディ「Eat It」が爆音で流れていてのけぞると、爆音で今度は高樹澪「ダンスはうまく踊れない」、というよほど狂ったDJでもつながない選曲で唖然とさせてくれた。その後U2の「With Or Without You」という流れはもう極北だ、BGM界の。そんなのが流れている店内では普通に老若男女が買いものをしているわけだから、なんか冗談みたいな光景である。

有線なのだろうか。しかしだとしてもあんなチャンネルを流しているところには滅多に出会えないと思う。つかさ屋はBGMのみならず、陳列棚に手書きポップが乱れ咲き、最早品ぞろえもセレクトショップ状態で独自路線のものが多数あるし、魚も凄く新鮮で美味しいので宮城県にお越しの際には是非一度寄ってみたら良いと思う。そして狂ったBGMを堪能したら良いと思う。

しかしこの我が家から一番近い店舗も震災から半年くらい経ってからやっと再オープンしたのだった。もうね、色々なことを考える時にもべっとりと裏には震災が貼りついているのである。たとえ津波が達しなかったところに暮らしていても、だ。

Leonard Cohenの「Old Ideas」を聴く。齢77歳の彼の新作である。正直、彼のスタジオアルバムは92年の「The Future」以降の2枚はいまいちピンと来なかったのだが、昨年はスタジオアルバム全タイトル入りの箱Complete Studio Albums Collectionを通して聴く羽目になってしまったりしたが故に最早彼の全てと向き合わざるを得なかったので、その勢いで新作も聴いている。ここのところ過去のライヴ盤は勿論、最近のライヴ盤も出ていて聴いていたのだが、そのライヴ活動が功を奏したのか、はたまたPatrick Leonardのプロデュースや共作のおかげなのか、大分すっきりとしていて生々しいアルバムに仕上がっている。半端なAOR的な滑らかな音づくりがどうにも最近の作品ではしっくりこなかったのだが、今作はシンプルながら力強い。アクースティックギター1本でヴォーカルだけ、とかだといまだにゾクゾク来てしまうのである。昔から渋くて、低い声だった彼だがここに来て年齢のせいかかすれのようなものも相まって、更に凄みのあるヴォーカルになっている。また、歌謡曲一歩手前の哀愁のメロディはここでも相変わらずの勢いでどことなくゴスペルに近いような、そのような美しさを湛えているのであった。歌詞も愛と神と自虐、で変わらぬ彼の世界である。決して身体が自然と動き出すようなアルバムではないのだが、リラックスして聴いていても背筋を伸ばすことを強要されるような、そういう音楽である。ここに来てカントリーノリの復活も嬉しい、今年のベストアルバムの1枚になることは確定の傑作。