You Can Dance

ということでワイキキなう、である。

着いて3日目であるが、私の滞在している場所がワイキキビーチのえらい近くのホテルなのでめっちゃ観光客みたいな存在でここにいる。実際は朝7時前に起きて7時台のバスに乗って大学に行って英語で授業を受け、英語で発言し、英語で会話し、英語を読んで解釈して、という観光とは程遠いことをしているのだが。つまりワイキキビーチと朝には真逆の方向に向かい、皆遊び疲れている夕方頃にワイキキビーチに戻ってくる、ということを繰り返している。

付近には免税店やらショッピングモールやらたっかいレストランやら射撃場やら、やたらと金を落とさせようとするところだらけである。金がめっちゃ自腹(望んでないのに)の私としてはいかに切り詰めるかが結構大事な問題になっているのだが食事が高い。ホテルで朝食が取れない、とわかった瞬間の私の絶望の様子は想像に難くないことであろう。毎食10ドル近くかかっているのだがこれをなんとか切り詰めていかなければかなりきっつい。とは言え毎食丸亀製麺インハワイ、では味気ないものであるし、しかもえっらい行列なのでそれはなんかこう、生活ってことではないのではないのか、ってわけである。

そしてワイキキにはCD屋がない。この際贅沢は言わない、中古盤がなくても、アナログ盤がなくてもなんかCD屋が、とか思ったがないのであるよこれが!毎週火曜日にはタワーレコードに行き、週末には何らかの形でレコードをゲットしていた私としては、こういうライフスタイルを20年以上続けてきた私としては、果たして己のレーゾンデートゥルは、と悩むことしきり、である。せっかく夕方の時間が日本での日常よりもはるかに使える境遇であるのに、何も新たな音盤に出くわしていない、というのは全く持って理解しがたいものである。足を延ばせばそういう環境はあるみたいなのではあるが、そんな日々の活動でへとへとになった後にそんな冒険する気力は残っていないわけで。まあ、週末になったらなんかレコード冒険譚でもここに記せるのではないか、と思うのだけれど。というかそうならないとここをお読みの方々も、そして何より私自身も納得がいかないのではないか、と思うのだけれども。

いや、こんなに3食外食って経済的にも肉体的にもきっついもんだ、とは思わなかった。たった3日しか経っていないのだけれども。という苦労譚は置いておいて、密かに50%オフでマーク・ジェイコブスのパンツ買ってしまった、ということは内緒である。だってさあ、50%オフですよ・・・?1万くらいですよ・・・?

ああ、でもThe Jesus And Mary ChainThe CureのPVにワイキキ初日に歓迎を受けた喜びを忘れちゃいない。だから今日も己のPCでBryan Ferryの「Olympia」を聴いて夜をやり過ごすのである、ごくマッシヴに。このアルバムが出た当初は熱狂的に盛り上がったものであるが、セールス的にも普通に終わってしまったが故世の中的には普通にやり過ごそうという感じになっている風潮を私は決して許さない。参加メンバーの豪華さ(ManiだFleaだDave GilmourだSteve Nieveだ、とか)とかジャケがKate Mossだ、とかそういうのは置いておいて、オリジナル曲を含むアルバムとしては約8年ぶりだ、とかそういうのは置いておいて、こんなに丁寧に、且つ各曲毎にアプローチが著しく異なるにも関わらず結局Ferryさんのアルバムやねえ、という感想しか残さないトータリティの完璧さに於いて彼のアルバムの最高傑作と言っても過言ではない作品である。最早彼の声はウィスパーヴォイスのような感じではあるのだがそれも含めて全体の気だるい感じは他に類を見ない。たとえロッキンなビートの曲であれダンサブルな曲であれ黄泉の国への行進のようなゆったり感の曲であれ、である。もう彼の声さえあれば良い、というキモいファンの声はさておき(たとえば私のようなファン)、全体として飽きさせない作りになっているし、いつ聴いてもなんだか包み込まれるような安らかさが覆っている傑作である。でも、この包み込むような安らかさは90年代以降の彼の作品からはいつも感じ取れるものであるし、名オリジナル曲多数含む前作「Frantic」でもあったものである。だからこそ「Frantic」を貶す輩(某MMとかいう雑誌の、ネオアコ、と呼ばれる音楽以降進むことができないのに変に足掻いている、もしくは「己の度量は努力の末にこんなに広がったんですよ」ということをアピールすることに余念のない方)にはまず天罰をとか思ったりするのだけれどもそれはまた別問題でこのアルバムは、Roxy Musicのボックスが出るのに合わせて是非ご賞味いただかなければ仕方がない名盤なのだ、ということをこの南国の地より訴えたい次第である。

というか、ボートラ2曲+リミックスCD+DVD+豪華ブックレットのエディションがこんなに安くなっているんだからチャンス、と言うしかないだろう、という・・・。