さて早いものでカナダに来てからもう2週間が経ってしまった。先週の水曜日まではなんだか寒かったのと慣れない生活と時差ボケのせいで物凄く体調が悪くて、これは死ぬんじゃないか、とか不安だったがその後はちゃんと眠れてちゃんと食べて、という生活で健康なのでご心配なく、とか言っておきながら今週の日本時間の土曜日には帰国してしまうので、なんだかなー、という気持ちでもある。
日本に帰りたいけど仕事には戻りたくない、という気持ちでもある。だいたいこちとら日本の16時間前の時間で生活しているし、Wi-Fi環境があれば連絡取れるけどそれ以外は無理だから、年度末といえども、超特急でやることはやっといたわけなので出来るだけ連絡しないでくれ、とあんだけ離日前に念を押していったのに「会議に間に合うように連絡くれ」とか無茶なメールをこっちの夕方6時に送って来てそれから30分もない中でメールに添付された資料見てメール、とか人にやらせるような大バカ野郎がいるようなところに誰が戻りたいか、ってんだ。4月に入って職場に行ったら、めっちゃギチギチに詰めてやる。
とは言えこちらでは平和にしているので良い。先日はPlatinum Blondeという80年代にカナダで人気を博していたらしいバンドの、再始動してのツアーが私の街にやって来たので行って来た。いや、お世話になる家庭に自己紹介のメールを事前に送った際に「音楽が好きです」と書いてしまったものだから、全く知らないバンドなのに行くことになった。
客層は年齢高めで、演奏始まっても歓声や拍手は上がるものの誰も立たないから、バンドも業を煮やしてえげつない煽り方で盛り上げようとしていて、それがまあ面白かった。休憩挟んで2部構成でアンコールもすぐ出て来てバンド最大のヒット(らしい)曲を最後の最後にやってどかーん、と終了。
まあ面白かったんだけど演奏があんまりシャキッとしなかったのと全曲Bon Joviのマイナーコードの曲のようなメロディの曲をなんだかネオサイケ風のエフェクトかかったギターで、という正直ワンパターンな曲が多くてちょっと飽きたのだけど中でどうも聴いたことあるなー、デジャヴかなー、まあこういう音のバンドいっぱいいたし、私の専門分野であることはあるしなあ、とか思って、後からネットで調べたらCrystal Castles
がカヴァーしてた曲だった・・・。判明して驚愕した。いやーここ最近での一番の衝撃だった。
とかやって過ごしてたら、ステイ先も変わることになり引っ越して今度もまた事前に送った自己紹介メールに「音楽が好きです」(まあ要は同じ内容のメールを事前に2軒に送っていたわけだ、タバコも吸いますよ外で大丈夫ですけど、ということも伝えなきゃいけなかったし)と書いたもんだから、今度はSean Burnsというカントリーシンガーのライヴを観に行くことになった。
会場はなんだか周りにはフィットネスクラブとか病院とかがあるようなハイウェイ沿いの、建築事務所の2階の会場でまあ小さめなんだけれどもカーペットひいてあってパイプ椅子並べて、だいたい5、60人くらいで満杯になっているところであった。で、それでSean BurnsがRip SlymeのRyo-Zみたいなルックスで、そんなRyo-Zが物凄い滑舌で喋り捲って、火を噴くようなテンションでバンドと共に突っ走るカントリーソングばっかり演奏するものだから、えらいかっこよかった。MCも爆笑で、ラジオ番組やってるのも納得、という感じであった。
今回は誰かがカヴァーした曲の原曲、とかそういうオチはないのだけれどもものすごい濃密で面白いライヴだった。ここアルバータ州レスブリッジはアメリカに近い、穀物畑が一面に広がるようなそういうところで、ピックアップトラックが凄く多いような、そしてほっとくとみんな牛肉とピザとジャガイモばっか食べてるような、というところで、今お世話になってる家のダッジ・ラムという5・7リッターのバカでかいピックアップトラックで流れる(しかしこのラムはハイテクなやつでしかもラジオは衛星ラジオ)カントリーが嫌になるくらい似合ってしまう環境にいるので、凄く、そうだよなー、という気持ちになったのだった。
でもそういうライヴをやる会場に飾ってるレコードが、上から順にTalking Headsの「True Stories」
True Stories by TALKING HEADS (2013-05-03)
- アーティスト: TALKING HEADS
- 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
- 発売日: 2013/05/03
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とPeter Toshの「Legalize It」
(カナダは解禁されたんだがね)とRy Cooderの「 Bop Till You Drop」
Bop Till You Drop - Ry Cooder LP
- アーティスト: Ry Cooder
- 出版社/メーカー: Warner Bros. Records
- 発売日: 1979
- メディア: ?
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だったりして、色んな人がいるんだな・・・となんか不思議な気持ちになった。そして以前にはそんな小さい会場にPeter Caseも来てたらしくて衝撃だった。だいたい今回のSean Burns、投げ銭ライヴだったような、そういう会場だよ・・・。
他にも音楽ネタは色々あるのだけれども、80年代のUSチャートの音楽やカントリー、古い音楽に関して色々と、ある意味特殊な勢いで知識を有しているとこちらでの生活は、少なくともコミュニケーションの点に於いてはかなりスムーズになる、ということを今回も身をもって体験している日々である。
だがしかしそんな環境の中でRustin Manの「Drift Code」
に感動している。先日ヴォーカリストだったMark Hollis
が亡くなってしまったTalk Talkという最高の、最初はDuran Duran初期ばりのドラマティックなシンセポップだったのにどんどん謎になっていって最後は内省的なジャズみたいな音楽をやるようになってしまったバンドのベーシストだったPaul Webbのソロアルバムである。Talk Talk、とりあえずどの時期もマジで最高なので悩むのだが一応最後の2枚のリンクを貼ります。
さてこのRustin ManことPaulさんはTalk Talk後のユニットいくつかやったりしてたんだけど(’O’ Rangとか)、一番ドーンと来たのはPortisheadのBeth Gibbonsとのこのアルバム
- アーティスト: Beth Gibbons,Rustin Man
- 出版社/メーカー: Sanctuary Records
- 発売日: 2003/10/07
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だと思う。ただ、ここまで全く彼のヴォーカルはなかった。しかしここに来てRustin Man名義では2枚目、そして初のソロアルバムでは全編彼のヴォーカルが聞けるのであった。このヴォーカルがすごく味があって何故今まで歌わなかったのか、という思いがあるのだがまあ、Mark HollisにBeth Gibbonsだからな、相棒が。そして長い時間をかけてじっくりと、1曲ごとではなく全曲分まず1つの楽器を演奏して録音して、で次の楽器をまた全曲分演奏して、という変な手法で録音して作られただけあって、しかもほぼ全楽器ドラムと管楽器以外自分1人でやっていうらしく、ものすごい濃密な、そしてゆったりとした世界が広がるのであった。管楽器のアレンジとかもものすごい不思議な空間的広がりがあって、そして曲も優しい曲が多くて、なんだか荒れっぽいこれっぽい、ということができないのだけれどもせいぜい言えるのはRobert Wyattっぽいということくらい、だろうか。つまり最高、ってことである。なので今年の現時点でのベスト作品、である。