Out Of The Blue ( Into The Fire )

白と黒、M~XLのサイズ展開ですよろしく!秋の訪れを感じる今日この頃ですが、まだまだ貴兄貴女からのオーダー、お待ちしております!
 
私はまあまあ心が狭い人間なので、例えば家の不具合における不動産屋の対応だったり、職場の様々なことだったり、政治だったり、まあ許せないものは結構あるのだけれども最近ダントツで許せないもの、それはレコードの塩ビ焼けである。
 
これは要はレコード盤がビニール等とくっついて化学反応を起こして盤面が曇った状態になってしまって、時に薄くすーっとノイズが入ってしまったり、まあ入らないものもあったり、という症状である。
 
大体我が家はレコードをユニオンのビニール外袋カバーに入れて、中はケースバイケースで内袋のビニールを使ったり使わなかったり、というか中古盤とかだともともと入っているものもあるからそれはそのまま、と言う感じで保管しているのだけれども、ピクチャーディスクとかカラー盤とかの場合、ものによってはそもそものジャケットが厚い硬いビニールジャケットのものがあって、それがちょっと今回我が家のレコードをひっくり返して色々点検してみたところ塩ビ焼けを起こしているものがあって、まあ凹んだ次第である。
 
ある程度気が付いた時にはそのピクチャーディスク等をその厚いビニールジャケットから出して、その中には戻さずに薄いビニールの内袋に入れて、外袋にその厚いビニールジャケットと一緒に入れる、とかはしていたのだけれども全部が全部そうなっていたわけではなく、例えばAntonyとOno Yokoの10インチとか、Tresorから出てるJuan Atkins、というかInfinitiのリミックスカラー盤12インチ3つ

とか、うあーと声が出てしまうくらいに厚いビニールジャケにレコード盤がひっついていて、まあ塩ビ焼けだったよね。AntonyとYokoさんのはまあそんなに音には影響ないっぽい感じだったけど、Infinitiは、うすーくだけれどもノイズ入ってしまってて、これは何だかやり場のない怒り系で非常に悔しく壁とか叩きたくなる感じであった。

 

結構硬いビニールジャケに入ってるととくにカラーとかピクチャーじゃなくても盤が塩ビ焼け起こしているものも見受けられて、Frictionの「Crazy Dream」

CRAZY DREAM/KAGAYAKI/BIG-S

CRAZY DREAM/KAGAYAKI/BIG-S

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とかCassiberの「Beauty And The Beast

Beauty & The Beast

Beauty & The Beast

  • アーティスト:Cassiber
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とかもジャケのビニールカバーが硬い奴でぴったりしているためか、内袋に入ったレコードなのに若干焼けており、Cassiberはちょっとノイズがうすーく入る箇所が出てきてしまっていた。

 

こうなってくると我が家のレコード全部見てみないと落ち着かなくなるわけで結構この1週間、夜な夜なレコードのチェックに励んでいたのだが、まあ虚しいものである。なんで家に置いているだけで、こんな目に・・・、と世を儚んでしまいそうになっていた。

 

それでまた厄介なのが焼けているのに音に影響なかったり、あんまり焼けていないのにうすーくノイズ出たり、とか意外に様々なものがあって、「いやこれやばいだろ」と思ったKylie MInogueのピクチャー12インチとかDavid Bowieのピクチャー7インチシリーズとかは全然大丈夫で、そんなに塩ビ焼けしていないVideo Aventuresの10インチとか、なぜかちょっとノイズが出たり、とかもうなかなか難しい。ところで、Video Aventuresは何故か2枚あってそれも驚愕したが、それは保険のためだったのだろうか、やるな自分・・・。

 

以前はCDのディスクが腐って再生不可能になる事態、というのもあったが(我が家のThe Auteurs VS μ-Ziq

 

とか)、なんかいずれにせよ長く愛しているものの経年による劣化は空しいものである。こういうところから人は、諸行無常ということを知るのである。『平家物語』の冒頭に於いても、レコードの塩ビ焼け、とくにCassiberのB面についての言及があり、親鸞もおそらく浄土真宗を開いたきっかけは所有していたピクチャー盤が塩ビ焼けしたからなんだろうな、ということは容易に想像がつくわけで、要は鎌倉や室町の時代から、人々は塩ビ焼けと向きあって生きてきたわけである。

 

とよしなしごとを考えてしまうくらい結構やられたりもしたが、The Theの「Cold Spell Ahead」ピクチャーディスク

は厚いビニールカバーにくっつきまくってビニールの跡ついていたけれどもノイズは気にならず(というかそもそもが音質があまりよろしくない)ちょっと安心した・・・、という勢いでThe The祭が開催され、今日は「Infected」を聴いていた。

Infected

Infected

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1986年のもともとはThe The名義では2枚目にあたる(今では最初のMatt Johnson名義のアルバム

がThe The名義になってしまったので3枚目か)アルバムである。私がThe Theという名前を認識したのはこのアルバムからなのだが、ちょっと小学6年生が悩みながら買うには、ジャケットが今でこそ再発で良い感じだが、オリジナルがこういうジャケで

Infected

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UK初回限定もこんなん

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だったので、まあ今では何ら抵抗ないけど、ちょっとまだまだ駆け出し時代には抵抗あったよね・・・。だからアルバムとしては89年の「Mind Bomb」

からまともに聴き始めたのだけれども、後追いで「Infected」を聴いてそのテンションにびっくりした記憶がある。インダストリアルなノリもある高速ハイテンションナンバーなタイトル曲で幕を開け、全8曲、あっという間に聴けるのはポップなメロディに、当時のエレポップ勢と一瞬近い感じもあるのだけれども明らかに背骨が違う強靭な音(元SwansのRoli Mosimannが手掛けているからか)で、まあ兎に角あっという間に興奮しながら聴けてしまうアルバムである。そんな中でAnna Dominoも参加してひと際洒落た雰囲気の「Heartland」が実は「イギリスはアメリカの51番目の州」と歌われる痛烈な批判の曲だったりして、まあ良くスタジオで練り込まれた強力な音に、時に政治的な、時に引いてしまうくらい激烈なラヴ(?)ソングだったり、という歌詞、で実に真摯なアルバムである。90年代半ば以降このままのテンションで駆け抜けるのはしんどかったのか、長いことリリースが(変則的なもの以外)なかった時期もあったけど、最近またちょこちょこと復活の兆しが(ライヴも含めて)あったりするのは実に嬉しい。