Lungs

MIXED BAG Vol.18 2022年9月24日(土)21:00~@ Club SHAFT ( www.clubshaft.com )

ADV:1500yen+1Drink 600yen    DOOR:2000yen+1Drink 600yen

Guest DJ: tdsgk ( AOBA NU NOISE / csgb ), B. Toriyama

DJ: Dubby A ( Natural 4 ) / sari / Sumire Riperton / HIROSHI ( 超黄 )

12時過ぎから何だかよくわからない感じの1時間、になりそうです、がよろしくお楽しみに、且つお手柔らかに・・・!お待ちしてますねー。

 

涼しくなりつつある仙台ですが、TシャツはいつでもOK!

aobanunoise.thebase.inあkk

よろしくお願いいたします!

 

ボビー・ギレスピー自伝』がべらぼうに面白い。

お馴染みPrimal Screamのフロントマンが、幼少期から1991年の「Screamadelica」までのあたりを振り返った自伝、である。

 

当然こういうミュージシャンの自伝の場合、デビュー後とかの「読み手も知っている時期」の裏側が興味を惹くのは当然なことではあるが、このボビー本の場合、そこに至るまでの幼少期のあたりからまずめちゃくちゃ面白い、というか色々と驚く。両親の政治的なスタンスとそれに関係する家庭内の状況とかが詳細に描写され、またそれが本人に与えた影響の大きさとかにまずは大いに感銘を受ける。そうか、彼の(というかPrimal Screamのオフィシャルの)Instagramとかでの激烈に保守党を非難するような姿勢のルーツはここにあるのだな、という風に今とのリンクがはっきりと見て取れる点が実に清々しい。あ、ちなみに、やはりフットボール狂なのね、というところも今のInstagramでの様子ともつながって、こちらは微笑ましい。

 

そう、Primal Screamと言えば、思えば1997年にダイアナ元王妃が事故死した後にUKでのライヴをキャンセルした際にもステートメントで、「ダイアナであろうと王室の誰であろうと敬意はない。君主制反対」みたいなことはっきり言ってたのも印象的だった。ということで、なるほど筋金入り過ぎるくらいの出自なのだな、ということが裏書きされたのであった。もちろん本書でも、サッチャーやら保守党の政策に対しては猛烈な勢いの批判があちらこちらで大爆発している。

 

という風に、時にめちゃくちゃ熱い彼のステートメントがエピソードの合間に自然に入り込んできて、全体としてそれが何事に対してでも、たとえセックスドラッグロックンロールの世界の話になっていったにしても実に真摯な彼の態度、というのが印象的なのであった。説得力あり過ぎて、いやードラッグって大事なんだなあ、とかこっちが思ってしまいそうになるくらいに、大真面目に何事にも取り組んでいる様子がとにかく印象的、まっすぐ過ぎるくらいの人なんだな、という人物像がはっきりと浮かび上がる。

 

当然その姿勢は音楽に対してもで、とくにパンクと出会って以降の音楽との向き合い方は尋常じゃないくらいの貪欲さ、真摯さである。パンクのシングルを聴き込みまくり、同時代の所謂インディバンドの音源もかなり広く聴いているし、掘り下げて掘り下げてブルーズやらカントリーやらソウルやらまで、一方でアシッドハウスに出会い、ということで結構普通に本人は書いているけれども、良い意味で異常なまでの音楽愛、が溢れているのだった。まあ、それはPrimal Scream聴いてれば自然とわかることではあるのだけれども。

 

そう、真摯、なのである。真摯であるが故に時間軸を飛び越えて過去の話のど真ん中に「今」の話が突っ込まれては消えていく、そういった本書の良い意味でのぐるんぐるん具合が生まれているのかもしれない。しかしそれが同時に結局、人間Bobby Gillespie、というものを活字から読者が形成することを可能にしているのだからこの本、結構凄いことになっているわけである。あと自身のメンタルの具合とか過去の恋愛や人間関係などについてもオープンな筆致で書かれているところも、内容云々よりも雄弁に人間Bobby Gillespieの在り方を炙り出しているところとかも。

 

とはいえ、ね、私のような人間からすれば、そうかAltered ImagesからThe Wakeが出てきて、The Wakeファーストアルバムのあの印象的なベースはBobbyだったのか、とかThe Jesus And Mary Chain「Just Like Honey」の女性コーラスはBobbyの彼女だったのか、とかなるほど「The Hardest Walk」がFriends Againね、とかThe June BridesとかThe LoftとかPaul HaigとかNikki SuddenとかFeltのLawrenceへの言及とか(ほんの一言だとしても)だけでも盛り上がってしまうので、大変に楽しめる本なのであった。あと当然面白くないわけがない90年以降の目まぐるしい展開は全く息もつかせぬ展開なので、全然本を手放せなくなってしまって生活に支障が出るくらい読みふけってしまうこと請け合い、である。

 

しかしこの間まで読んでいたThe SlitsのVivの自伝(これも震えるほど衝撃的に面白い)

といいCoseyといい

Traceyといい

ちょっと前だけどBernardといい

Johnnyといい

階級、パンク、暴力、アートへの愛、サッチャリズム、というのは私が大好きな時代の音楽を良い面でも悪い面でも裏打ちしているものなのだな、とふと思う。そして優れたミュージシャンは皆、ディテールまでちゃんと覚えている凄い記憶力の持ち主、ということがあるのかも。

 

で、全然関係なくStell Donellyの「Flood」がべらぼうに良いアルバムである。

勿論ファーストも最高

Beware of the Dogs [Analog]

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だったし、なんなら最初のミニアルバム

Thrush Metal [Analog]

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から面白かった。で、今作は前作後のツアーでの疲労、ロックダウンその他諸々を経て、且つピアノで曲が作られたり、ということで前作と曲の感じがまた違っていて、スケールも大きく、メロディもゆったりと流麗に(それは曲調の問題ではなく)なっているが、歌詞は相変わらず現状を鋭く糾弾していたり、悲しいことが歌われたりするのだが相変わらずの彼女の可憐な歌声、そして笑顔の多い彼女のイメージのせいもあり、決して暗く重くはない。でも歌詞を読んでみると、という感じの二面性のあるポップソング集、これには昔から無条件に弱いのでやはり降参、である。でもそれ以上に曲の粒ぞろい具合が前作とは比べ物にならないくらいなので、コンパクトなポップソングの未来はここにあるのかも知れない。