Murder Version

あ、もしかしたら前のNag3の最後の方に於ける檄文のせいでためらっていらっしゃる方々もいるかと思いますが、最早何も気にしなくなった今、当「日々の散歩の折りに」はリンクフリー、というかリンクスーパーフリーなので、あついやばいまちがいない感じでガシガシ貼っちゃってください、どうぞご遠慮なく。

さて、最近南米文学(と一括りにするのもどうかと思うのだが)があついやばいまちがいない(←もう止めろ)、というくらいのブームであるイン私の中。ということで今日も今日とてボルヘスの『ボルヘス怪奇譚集』ボルヘス怪奇譚集 (晶文社クラシックス)を読んだりしては狂おしく盛り上がっているのだった。

厳密に言えばこれはボルヘスとアドルフォ・ビオイ=カサレス古今東西の書物から色々面白いものをピックアウトして編んだ、所謂編集ものの一冊なのであるが、ボルヘスが物語の真髄はここにある、と断言するとおりとても面白い。と同時にとてもあっけない激短編の羅列が延々続く、という考えてみればとんでもない本でもある。

本当に古今東西の書物から抜粋したもののコンピレーションなのである。キケロもあれば、ホーソーン列子など、怒涛の如く世にも奇妙な短編(しかも大体1ページに満たないか、長くて2ページ程度)がどばどばと出てくるのだから、続けて読むと軽いトリップ感に襲われるようである。あっけないが故にしっかりと読まないと、全く何が何だかわからないような話が延々続くわけであるから、ある意味、こういう言葉が、そしてこういう言葉あるのかどうかわからないが、こちらの読書力が試されるような、そういう本でもある。

私は実は何故か短編が好きで、ここでも収録されているがカフカの『短編集』カフカ短篇集 (岩波文庫)とか、本当に嫌になるくらい読んだ記憶がある。何と言うか、短編、とくに2ページにも満たないような(私は何気に上でも使っているが「激短編」というジャンルを呈したい)ものには本当に、漫然と読んでいると一体あれは何だったんだ、と過ぎ去ってしまうような勢いなのだけれども、その刹那な輝き故に何故か心惹かれてしまうのであった。

多分に私が日頃ぼんやりさんであるが故に、そのぼんやりさんテンションに警鐘を鳴らすかの如く集中力を要求してくるようなものが、正しく激短編であると思うので、そういう意味で刺激になる、ということもあると思う。ある意味自分を律する、というかRobert Fripp言うところのディシプリンのようなものか。しかし私がぼんやりさんだという問題以前に、本読むならここまで集中して読まなきゃねー、とそれらに言われているような、そういう読書の楽しみが詰まっているからなのかも知れない。だって、世の短編全てがそうというわけではないが、普通に考えたら想像もつかないような、奇妙な物語、あっけない物語、とんでもない物語、そしてありえない物語が延々続くわけだから、全精力を集中して読書に向わなければならなかったりするわけだから。なんだか日頃使わない部分を使うように仕向けられる、というのが凄く面白いのかも知れない。

と色々考えてはみたものの、既にビール1リットル近く飲んでいる今の私の頭の状態では何ら合理的な説明などできるはずもないので、皆様もどうぞ一緒に読んで考えていただければな、と思ったりもする。というか、そんな面倒な話以前に、本当に何だよおい、という面白い話がぎっしり詰まっているのでご一読をおススメしたいものである。ちなみに、私は「夢」についての物語が別にこの本に於いてのみならず本当に好きだったりするのだが、当の私自身があまりぶっ飛んだような、そして記憶に残るような夢を見ない人間だったりするのである意味、それってないものねだりなのか、とかそういうことまで考えてしまった次第である。

Peter Rehbergの「Work For GV 2004 - 2008」を聴く。MegoレーベルもEditions Megoとして新規スタート以来、KTLKTLだのPrurientArrowheadだの、かなりノイズ、というかインダストリアルというか、寄りの傾向が顕著であるが、この別名PITA、つまり同レーベル主宰の彼の作品もその路線に間違いなかったりする。これはタイトル通り、フランス人振り付け師、そして人形作家でもあるGisele Vienneの作品用の音楽を集めたアルバムである。ってまたしても偉そうに書いているが、全くこのお方のことは存知あげておりませんでした。気を取り直して色々書いてみるとこないだのZ'evとの共演ライヴ盤Colchesterとかあったりすることから明らかな通り、所謂ラップトップ音楽とかそういう範疇を遥かに超えて、というかラップトップを使ってはいるが、最早ミュージックなのか単なるノイズなのかキワキワな世界に突入してしまった彼の音楽は結構最近大変なことになっているのだが、この作品でもやはり結構ハーシュなノイズの洪水が襲ってくるものもあったりする。それは最早快感、という言葉で表現できるくらいの体験だったりするのだが、同時に何だか叙情的な表情を見せる曲もあったりして、まったく一筋縄では行かない。リーディングが乗っかる曲もあったりして、決して聴きやすいとは形容できない世界なれども、全く苦痛をこちら側に感じさせるような垂れ流しにはなってはいない、当然ながら。それどころか、上記短編に対する思いと同様、一体この面白い音は何なんだ、とかそういう興味を掘り起こしてくれる、という点で実に素晴らしい作品である。一応GVさんの作品用のサウンドトラック、ではあるけれども、当然ながら音自体でそういうバックグラウンドと切り離して100%楽しめる傑作である。