After The Revival

昨夜は不本意ながら我が家に仕事を持ち込んで、うおおおという勢いでPCに向って作業していたらあっという間に2時間くらい、ノンストップで作業してしまっていたのだった。

何か怒涛のように集中すると、気がつくと不自然な体制のままにずーっとキーボードを打ち続けていることが多い。昨夜もそうで、一仕事終えたら何だか肩が凝っていたり、体内に何かが澱んで沈殿物が出来ているような、そういう感覚であった。これはもしかしたら物理的にではなく、我が家で仕事に時間を費やしてしまった、という精神面での澱みなのかも知れないのだが、兎に角澱んでいるような、そういう感覚に押し潰されそうになっていたのだった。

それ故夜中の12時半だというのにちょっくら川沿いの土手を散歩したくなったので散歩してみた。家の駐車場の金網のすき間から抜け出して土手を駆け上がりアスファルトの遊歩道をぷらぷら歩いた。

夜の川は不思議である。昼間は感じられなかった何か物体の気配がする。魚なのか、鳥なのか、始終暗闇の川面に動きが見られ、水の音がする。ほほう、とか思いながら歩いていれば遠くには何か不思議な物体が見えたような見えないような。とまあ、なかなかに味わい深い時間を(あ、くだらねえ、とか思われたかも知れないが個人的には実に面白かったのである)過ごして、肩をぐるんぐるん、誰もいないのを良いことに思いっきり回しながら歩いていたら、座っているカップルの姿が眼前に現れ、何だか一気に気まずくなってしまった。

それは多分あちらさんにしても同じことだろう。折角誰もいないであろう遊歩道の片隅で楽しく語らい、もしかしたらこれから(以下自主規制)という時に、向こうからわけわからんおっさんが肩を回しながら煙草咥えながらやってきたわけだから、気まずかったであろう。実に申し訳ないものである。

と言う何だか気まずい思いのままに夜の散歩を終えたわけだが、意外に近くからバイクの爆音とパトカーのサイレンが聞こえ、そうだな、我が地区はそういう土地柄だったな、と思い出し何か危害加えられる前に退散するか、と帰宅したのであった。

そして帰宅してからBrian Bladeの「Mama Rosa」を聴く。Daniel Lanoisのお抱えドラマーとして有名な彼であるが(と書いているが、我が友人からの指摘があるまでその名前を意識したことがなかった)、これは彼が作詞作曲し歌ったシンガーソングライター作品然とした佇まいのアルバムである。ちなみに彼のこれまでのソロの作品は何だかジャズアルバムらしいのだが未聴である。彼の曲はゆったりとしたメロディを薄く重ねていくような曲ばかりで、そのLanois印(ちなみにLanois本人はギターでしか参加していないのだが)的空間処理も相俟って非常に一聴した感じでは地味なのだが、これがまたその薄味の具合故に何だか何度聴いても飽きのこないじっくりと楽しめるアルバムになっている。彼のヴォーカルは実に伸びやかでソウルフルで、そして温かく、時にこの抑制の効いた感じと相俟ってTerry Callierの諸作とかを思い出す勢いである。ちなみに、Lanois絡みで黒人でタイトルがこんな感じ、とくれば嫌でも連想されるのはThe Neville Brothersの「Yellow Moon」Yellow Moonかも知れないが、音世界はかなり違えど何故か風情は通じるものがあるような。ドラムスは数曲にしか入っていないような、そういう実に大人しい音世界ではあるけれども。Milton Nascimentoの改作曲もあり、内省的な空気が濃いけれども決してワンパターンには終わらないし、力強さも感じられる、そんなダークホース的傑作。