Good Luck

今日も今日とてカレーを作ったのだった。

結構何度も何度も同じレシピでカレーを作っているのだが、どうしても毎回同じようにはいかない。カレーは生き物、という格言があった、かどうだか。まあそれは置いておいて、毎回毎回新しいチャレンジの気持ちなのである。

そんな毎回毎回「Like A Virgin」の気持ちで(Madonnaばっかり聴いてます)挑んでいるわけであるから、時間がどれくらいかかるかも読めなかったりする。だから今朝は起きて朝食食べて掃除して布団干してから午前中のうちに作り始めたのだった。あわよくば昼前には出来上がって昼飯に軽く味見して、その後電車で出かけて、みたいな野望を持ちつつ。

ところが今回、私はクミンシードを新たに導入したのに気を良くして、徹底的に玉ねぎを茶色く炒めることに覚醒してしまって、もうこれでもかこれでもか、と時間の経つのも忘れて炒め続けて、親の仇のように炒めてしまったのであった。出来上がりはもう、原型が果たしてなんであったのかわからなくなるくらいの茶色い、しかも甘いニュルッとした物体にまでなっていてかつてない炒め上がりっぷりであった。

これには大満足でその後煮込みまくって完成させたのだが、最早昼前、とかそういう時間ではなく、何だかそろそろお昼寝でもいかがですか、的な時間になっていたのには閉口した。当然昼飯など食べていないし、電車で出かけるにはもう余裕が持てない時間であった。ということで車で出かけてうわーと用事を済ませる、という1日になってしまったのであった。

いや、カレーを休みの日にじっくり作ったり、というのは凄く良い休みの日の過ごし方だと思うのだがそれは客観的な話であった、私の場合貧乏性なのでついつい休みの日にごちゃこちゃ計画を詰め込んでしまうのである。だから何だか個人的にはちょっとばたばたしてイマイチだったなー、という結果になってしまうのだ私の休日はいつも。え、用事は何かって?いやいや、聞かないでくださいよそんなこと・・・(と中古レコードが3枚入った袋を背後に隠しつつ)。

まあ、カレーは美味しかったのでよしとしよう。ってたまにはこういうほっこりなことを書いてみたい気持ちにもなったりするのであった。というかそもそもほっこりなスタンスなのかどうか、はなはだ疑問であるが。だからSondre Lercheの「Heart Beat Radio」を聴くのであった。ノルウェーのシンガーソングライターの新作である。毎回毎回彼の出す作品にはワクワクさせられるのだが、それは今作でも相変わらず、である。サントラDan in Real Lifeを手がけたりしていたが、オリジナルアルバムとしては約2年ぶりである。前作はアグレッシヴなロックンロールアルバムPhantom Punch、前々作は落ち着いたジャジーなアルバムDuper Sessions、と多種多様なアプローチを見せてくれるのだが、今作はなんと言うか、自然体な感じのキラキラとしたギターサウンドが印象的なポップソングがぎゅっと集められた感じで、めんどくさい衣装を脱いだような素直な作品である。無論前作も前々作も素晴らしいのだが、何か今作からは肩の力が抜けたような印象を受けるのであった。とくに流麗なストリングスが美しくて凄く良いな、とか思っていたらThe High LlamasのSean O'Haganが手がけていた。なるほど、こういうつながりがあるのか・・・、と唸らされるものである。しかし肩の力が抜けた、とは書いたものの、ここに収められた曲は全て、彼のソングライティングのスキルはもうとんでもないことになっている、ということをまざまざと見せ付ける曲ばかりで一言、圧巻、である。こんなに凝った曲ばかりなのに、物凄くすっきりと聴こえさせるのはある種天才の所業だと思うのだが、それはPrefab SproutのPaddy McAloon他の天才たちに通じるものであって、もうそういう域なのである彼は。まあ、まるでPrefab Sproutの「Bonny」と「Appetite」が合体したかのようなアレンジ(とくにコーラス)の曲があったりするところが、何だか天才の可愛らしさを覗き見たような気持ちになって微笑ましいのだけれども。こういうアルバムが新作としてきちんとリリースされるうちはまだまだ健全な世の中なのかも知れないなあ、とちょっと安心するような、そういういきなりエヴァーグリーン級な傑作である。