ブラックホールをダウンロードして君にあげようか

台風と言えば5年くらい前に長崎に行った際、思いっきり直撃を食らって思いっきり足止めを食らって難儀したことを思い出す。

ということであの大荒れの海と全然来る気配のない電車を待つやるせなさ、そしてその後電車を諦めレンタカーで福岡まで移動した際の、高速通行止めで山越え(佐賀県あたりか)をした物凄い緊張感を思い出せば、この東北の地で家の中で過ごしている今日の台風はまだまだ全然余裕だ、とか言えるのだけれどもそれでもやっぱり何だか落ち着かないものである。

とくに我が家は川沿いなので、まあ大丈夫だろうとは思うのだけれども川が増水したらどうすんのや、的な不安がある。流されたらまあ、それは最早私がどうこう言う問題でもない規模だったりすると思うので諦めがつくのだが、浸水は避けたい。ちょっとは地面よりも高くはなっている我が家ではあるが、そんなもの関係ない勢いで水かさがどーんとか来たらどうすれば良いのか。

私の母方の実家は海の目の前で津波が本当に恐怖だった、津波警報の時には2階に避難した、という話を幼少のみぎりより何度も何度も聞かされ続けたので、どうも自然災害、とくに水系は何だか他人事ではないような、そういう気持ちになる。というか我が家の2階はアパートの他の住人の家じゃないか!(←何を今更)

でも結局のところレコードを上に上げなきゃ、とか床に置いている色々なものを高めのところに避難させなきゃ、くらいの発想しか持ち得ない私は、まだまだ危機管理体勢ができていないのであろうな・・・。

ということでどうやらそういう心配はなさそうなのでPan Sonic, Haino Keijiの「Shall I Download A Blackhole And Offer It To You」を聴く。2007年のベルリンでのライヴ録音である。このタッグは一体どういうことなんだ、とか思ったりしたが思えばPan Sonic灰野敬二に捧げる曲があったりしたな。で、内容はこの両者のタッグ、ということで大方の人が想像するであろう音、そのままである。Pan Sonicの電子音響の上で灰野氏が叫びギターを鳴らし、ということなのである。それだけと言えばそれだけなのだが、Pan Sonicが出す音が実に多様で、それがうまく灰野氏に刺激を与えているようで結構奇跡の瞬間が何度も訪れる、何だか感動的なライヴなのである。ハーシュになればなるほどギターもラウダーになり、蠢く低音ノイズにフィードバックが絡み、また静謐な空間を作り出せばそこには寂しげなハーモニカ(恐らく)が絡みギターも泣いているようで、と不気味な統一感と緊張感溢れる演奏があり、また灰野氏のヴォイスもあれこんなに野太かったっけ?というくらいパワフルだったり、まるで天使の声(聞いたことないし、想像した結果が灰野敬二の声だったりするのはどうかと思うのだが)のような具合だったりで、あっという間に引き込まれて聴きこんでしまうのである。1+1が2以上にならず、マイナスになったりすることもあるように感じられるのがよくある共演盤なのだが、このアルバムは間違いなく1+1が2の無限の階乗になっているのだった。ちなみに何かデザインが中も含めて良いなあ、日本語まで書いてあるしなあ、とか思って見ていたらStephen O'Malleyによるデザインなのだった。やるな・・・。