Memories

悪いことは言わない。この「日々散歩」を読んだ人は明日からの連休中、自分の都合の良い時間に、そうだな、できれば11時から21時の間に仙台のラヴレコーズに行ってCDを買ってくると良いと思う。悪いことではない。なぜなら今物凄い量のナイスなCD群が新入荷で入っているからである。だからあなたは必ず何かを見つけることができるはずである。私も昨日我が家の精鋭たちを放出してきたので、是非皆足を運んであなたの気になるCDを安価で手に入れるべきである。そしてただ音楽を聴いているだけではわからない、不思議な人と人とのつながりを変なイヴェントのような気持ち悪い形ではなく感じ取ることができるはずだから、是非街まで足を伸ばして中古のCDを買いに行くべきだと思う。休みの人もいるだろうし、休みじゃない人もいるだろうと思う。しかし自分の時間を削って自分の足で行って自分の目で見て自分の手に取ったCDというのは、今の時代、それだけでも思い出の一つになるだろうし、その後家で聴いた時にはその音楽を引き立たせる一つまみのスパイスになるかも知れない。だから悪いことは言わない。ラヴレコーズに足を運ぶべきなのである。

となんか偉そうに失礼いたしました。私が最高顧問、という称号を授かったお店なので是非頑張っていただきたいのです。悪いことには絶対ならないから、今まで行ったことない人も、久々に行く人も、みんな足を運んでくださいませ。

ということでPublic Image Limitedの「Plastic Box」を聴く。98年にリリースされたCD4枚組のボックスである。なぜかいきなり聴きたくなって久々に聴いているのであった。とはいえいつもサードアルバムまでをまとめたディスク1,2と3の一部、くらいしか聴いていなかったのだが今回は意を決して全ディスク聴いてみた。やはりディスク1,2のわけわからない、というか不気味なまでに収まりどころを知らない音楽にはいつ聴いても打ちのめされる。決して一瞬たりとも心休まる瞬間が訪れず、常に緊張のしっぱなし、みたいな音楽である。若干ごった煮的なファースト、ぶっといベースの強烈な音(このボックスでは何だか物足りない感じなのだが)がリードしまくる謎の曲だらけのセカンド、そしてドラムスと変な効果音とピアノとギターの不気味にトライバルなサード、それぞれからの多数抜粋とスタジオライヴやらシングルB面とかいろいろぎゅっと集まっているいるわけだから悪いわけない、というか聴かずに死ねなかったりする。それに比するとと4枚目からの曲でスタートするディスク3は何だか変に物分りが良すぎて物足りない。何というか初期に近いような曲でもアレンジやら音の処理やらでこんなに退屈になってしまうのか、と何だか悲しい気持ちになる。曲は決して悪くないのだが。それがディスク3後半の「Album」からの曲になるともう初期とか何とか関係ねえや!と言った勢いの、がしっとハードで重い音の曲連発になってかなり盛り上がる。おお、さすがJohn Lydon犬猿の仲になってしまったBill Laswellプロデュースじゃのう!と深く感動するのだが、ディスク4に入るとその高揚感もどこか空しさを残して立ち消え、ラストアルバムからの曲がほぼ全部スタジオライヴの音源になっているのは、さすがにJohn Lydonも思うとこあったのかな、とか思うのだが、初期との比較とかそういうことを抜きにしてもどこかに転がってそうな曲ばかりになってしまって、これまた悲しい気持ちになったりする。故John McGeochのギターは耳を独占してしまうような、格好良いフレーズをディスク4全体に渡って撒き散らしてはいるのだけれども。ということでディスクを4枚とも聴きとおす、という活動は、ちょっと後半で、なんで俺はこんなの聴いているんだろうか、という空しい気持ちにさせられてしまったのであった。しかし。だがしかし。John Lydonのヴォーカルは全編通して人をおちょくっているようで、いっつも怒っているようで、いっつも凄く不機嫌で、これにはとにかく感動させられてしまった。彼は常に頑張っていたのだ。それを支える「音」がちょっと残念な色を後期では帯びてくることが多くなっただけなのだ。ということを発見しただけでも今回の活動には意味があったかも知れない。いや、末期にも良い曲はあるんですよ。でもちょっとなあ・・・、という何だか自分の中でも折り合いをつけるのが難しかったりするのだなあ・・・。まあ言ってしまえば、前半2枚とプラスαだけでもがっつり元は取れる箱であるからお得と言えばお得である。なんか煮え切らない感じで申し訳ありませんが、結局興奮はしたのでした、はい。