Sink Or Swim

そういえばもうすぐ誕生日なので、何だか誕生日プレゼントをもらった。なんかちっちゃいターンテーブル型の「ミュージックプレーヤーの音楽再生にDJ効果音をMIX!DJ感覚で遊べるポータブルスピーカー!!」というものをもらった。要はiPodなんかのヘッドフォン口にこのちっちゃいターンテーブル型のスピーカーのジャックを差し込むとこのちっちゃいターンテーブルがスピーカーになるだけでなく、ボタンを押したり、ちっちゃいターンテーブル回すとそこに「あ、あ、あ、あ、あ、あいぇー」という声(M/A/R/R/Sの「Pump Up The Volume」でサンプリングされてるような声、って年齢層高めな喩えですみません)とかサイレンとかスクラッチ音がかまされる、というオモチャと言えばオモチャである。

ということで私も早速初代iPodnanoをつないで遊んでみた。この間PCを新調した際にiTunesも新しくしたので真新しいライブラリに入っているものに上記DJ(←しかしなんて紋切り型なんだ、DJって奴のイメージは)的効果音をかましてみた。

・・・駄目である。私の現在のiPodに入っている音楽では無理である。何せ今私のiPod内はThe Velvet UndergroundAntony And The Johnsons、浅川マキ、Nina
Simone、Phyllis Dillon、Tom Waitsという状態なのである。だから例えば浅川マキの名曲「にぎわい」DARKNESS Iに「あいえー」とか入ってしまうのである。Tom Waitsの涙の「Anywhere I Lay My Head」Rain Dogsにサイレンが、Antony And The Johnsonsの声とピアノだけでもう昇天の「Hope There's Someone」I Am a Bird Nowに「ずきゅずきゅずきゅっきゅー」とスクラッチが入るのである。

人それぞれだとは思うのだけれども、私は何だかiPodにはあんまり元気良い感じの曲は入れてないのである。なんか電車の中とか緊張するから(←何故なのか?)落ち着くのが聴きたいな、とか思うが故にiPodの中にはあまり速い曲とかラウドなのは入っていないのである。とは言え何だか無意識にそういうのばっかり入れていたわけで、なんか今回の一件で気づかされたというか何というか、それとも何だか歳取ったのか。もっと若い人は四六時中速くてラウドなのばっかり聴いているのか。うわああああ。

と勝手に妄想は突っ走る。まあ、そういうことでもないのだろうけれども。でも最近車に乗っていて信号待ちの際に近くの車からは物凄い速いキック音とまるでピークタイムのようなドラムロールに彩られたアッパーなトランスばっかり聴こえることが多いから、そういう妄想もあながち外れではないのかな、とか思わざるを得ない。奇しくもこの数日我が街では集団で人々が踊り狂うYOSAKOI祭りなるものが行われているので街中ぶっといビートとアッパーなウワモノに彩られてしまっている。そうなってくると、そうかやはり・・・、と更に勝手に妄想に裏づけがなされてしまうのである。

まあ妄想であることは重々承知なんだけれども。ただ音楽には私の場合TPOがあって、少なくともiPodでは落ち着いた感じのを聴きたいと思っているのだなあ、無意識に、と発見できたことが34歳最後の収穫、と言えるかも知れない。

ということでBad Lieutenantの「Never Cry Another Tear」を聴く。Bernard Sumnerの新ユニットの最初のアルバムである。やはりNew OrderはPeter Hookと彼の間の確執が今更原因になって今更本気で活動休止らしいから、これはElectronicとかと違ってサイドユニット、という位置づけではなく本気の一本勝負ユニットになるのだろうか。でも、結構それも頷ける力の入った仕上がりである。元Marionで後期NOのサポートだったPhil Cunninghamと無名の新人のJake Evansとのトリオ編成でベースにBlurのAlex Jamesが入っている曲があったり、ドラムスにNOのStephen Morrisが入っていたりする曲もある。しかしあの切ないメロディは思いっきり健在でそれがギター中心(というか3人ともギター弾くわけだから必然か)の演奏で、となってくるとNO末期の2作とかに非常に近い感じなのである。ヴォーカルはあのヴォーカルなわけであるし。でも何か吹っ切れたかのようなすっきりとした感じが実に印象的で、メロディもこれでもかこれでもか、というあの哀愁漂うたゆたうメロディなわけであるからして。あ、リードベースは入ってません、当然ながら。でもElectronicのような、ちょっとブレた感じみたいなのは全く感じられないから年月が流れたというのもあるだろうけれども、これはパーマネントなバンドだんだろうなあ、というのは体感できるのであった。しかしそれでいてなぜかPeter HookのMonacoMusic for Pleasureに似た手触りがあったりして(セカンドは未聴なんですが)実に不思議である。もしかしたらNO停止はよく言われるように性格的に対称的な2人の衝突というのが原因なんじゃなくて、逆に2人が音的に近すぎたんじゃないか、とか新しい説を提案したくもなってくるのだが、それもまた妄想なんだろう。しかし何かNOがどうこう、ぶつぶつ、とか言っているのはこのアルバムを楽しむ際には邪魔な要素であるのは間違いないので、素直な気持ちで聴くことが肝心である。そうすると何だか癒されてしまうんだなあ・・・。Jakeが歌う曲も2曲あるが、それも実にBernardとのコンビネーションが良いのである。デビュー作、しかも大物含む、ということでともすればやっちゃった感溢れる作品になりそうなものだが、1つのバンドとしての非常に有機的なまとまりが感じられ、これはもうこれからのパーマネントな活動が楽しみである、と言えるのであった。元気良さはあるけれどもこれはiPodに入れたくなるね、私の基準だと。