Albatross

以前も述べたが、今年は地味に毎月映画を観よう、と決意していたのだ。

順調に毎月映画を観てたものであるが、震災で思いっきりストップしてしまった。しかし震災から早数ヶ月、先日The Runawaysの映画を見て、やっぱり今年は毎月映画観たるぞ、と誓ったのだった。その映画そのものは、うん、まあ、悪くはなかったのだが、そんなに面白かったか、と問われれば・・・。

そして先日、バンクシーの監督した映画「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」がまさに上映中であることを知り、しかも上映期間が1週間にも満たない超短期間、しかも気づいたその日は最終日の一日前、ということで大慌てで観に行ったのだった。

いやーこれが、ここ最近観た中では最高に面白かったのだった。ドキュメンタリー映画なのだが、まるで優秀なシナリオライターがいるかのように話が転がって行き、これは本当はフィクションなのではないか、と疑ってしまうほどなのだが、あくまで全くのノンフィクションのドキュメンタリー、なのである。バンクシーを含むストリートアーティストの映像をひょんなことから撮りまくっていた撮影マニアの男が、これまたひょんなことから自らストリートアーティストになってしまい、物凄いドタバタとハイプを織り交ぜながら展覧会を成功させてしまうまで、を映画にしてしまっているのだ。

つまり撮影する側が撮影されることになり、しかもいつの間にか撮影していた対象がしていたようなことを自らしていく、ということでかなり今冷静に振り返ってみても、フィクションであったとしても凄い筋書きだな、と思う。しかし何度も言うようだがあくまでドキュメンタリーなので、これはもう事実は小説よりも奇なり、を思いっきり地で行く作品である。

しかも全体としてどこか皮肉めいたトーンで語られていくので、滑稽なノリと若干の底意地の悪さが感じられるところもまた不思議と落ち着く要因なのであった。90分、全く時間を気にせずぐいぐいと引き込まれて行ってエンドロール、という映画の楽しさを十二分に感じさせてくれる映画なのだった。しかもこの撮影される側になったアーティスト、Mr. Brainwashはこの展覧会だけでポシャったんじゃないのかなあ、とか思っていたら何と私も持ってるMadonnaのこのベスト盤Celebrationのアートワークを手掛けていたりして、実は活躍中なので更なる衝撃が走った・・・。

だから珍しく上から目線で、皆観たら良いと思う、とか我が地元にありがちな感じで言ってみたいところなのだが残念ながら我が街ではもう上映されていないのだ・・・。何だこの歯がゆさは!!

ちなみに音楽担当はPortisheadのGeoff Barrowだったりするからそこら辺も何だか良い感じなのだ。突如A Hawk And A HacksawWay the Wind Blowsが流れたりして、おっ、となったりする。ついでに折り目正しいドラムンベースまで聴こえてきて、やっぱりこういうドンベーは良いなあ、とか思ったらRoni Sizeの新曲だったりして、何だかブリストルの匂いが感じられるのもまたポイント高し。そういやバンクシーブリストル絡みの仕事も多かったしなあ、とか思いだしたり。

でも、それにしても、やっぱりこんなに凄く面白い、あんまりめんどくさいこと言わずに、しかもえーっ、とびっくりしながら観られる映画がこんなに短い上映期間なのはちょっと寂しいなあ・・・。もう一回観たいと思っているのに。

ということでPublic Image Limitedの紙ジャケがリリースされて、もう日本中PIL祭りになっていると思われる昨今だが、私も思いっきり祭り中、である。今日は「Metal Box」というか「Second Edition」を爆音で聴いていた、車で。今回缶入り3枚組メタル・ボックス(缶ケース仕様)でも「Metal Box」がリリースされているのだが、結局はCDだし、利便性を考えれば1枚もので良いじゃん、ということで冷静にこちらを買ったのだった。嗚呼大人な選択だなー、とか思うのだがふと思えばこのアルバム買うのCDとアナログ合わせて3回目だった。まあそっとしておいてください。今回リマスターということで前のCDに比べるとかなり音がデカくなっていてその分ベースも更にデカくなっていて気持ちが良い音になっている。ただ、このアルバムはアナログの3枚組、という化け物の音が基準になっているからまあ、こんなもんか、という感じになってしまうのは否めないのだが。私はPILはこのアルバムが最強メンバーによる最高傑作だろうなあ、と思っているのだがそれは今更言わなくても良いことで、兎に角四方八方から切り込んでくるギターと、異常にデカくて低いベースと、不気味に冷静なドラムスと歌ってるのか喋ってるのか真面目なのかふざけてるのか皆目見当のつかないヴォーカルによる、奇妙な一体感を生み出すバンドサウンドに圧倒されるものである。そして単にガシャガシャやってるのではなく、どこか一歩引いた冷静さが全体を覆っているところが唯一無二、なのである。そう、それはまるで缶を冬場に触ってしまった時のように冷たいのだ。