It Was You

一昨日、久々に財布の整理をしていたら中古レコード屋のポイントカードがあった。そういえば久しく行っていなかったな。前行った時は何買ったんだっけ?とか思いながらちらと裏側のスタンプが押してある面を見たら、スタートの日が19年10月13日、と書いてあった。有効期限は1年間。

やってしまった。あと4スタンプくらいで満杯だったというのに。

人生初の出来事である。故意にではなく、レコ屋のポイントカードの期限を切らしてしまったのは。34年間生きてきて初の出来事に軽く目眩を覚え猛烈に落ち込んだのだが、これはある意味私の中では象徴的な出来事だと言える。つまり、前と比べてあまり中古盤を買わなくなってしまったのだ。まあ、買うことは買うのだけれども、昔は何かに急かされる様に、取り付かれた様に中古盤屋を回っていたものである。それが我が街に於いて中古盤屋の数が減り、私も上記のような気狂い期を抜け、こういう期限切れ事件が起きるまでになってしまったのである。

昨今の音盤を巡るお寒い状況を考えるにつれ、もっともっと頑張らなければ、とか思っていた(限度はあるのだが、さすがに)矢先の期限切れ事件だったのでこの問題の、このお寒い状況の根は深いのではないか、とお前何様だというような勢いで憂いてしまった次第である。私の個人的な事件なのだけれども、何かこう実に今の状況の象徴のような気がしてならない。

ってか単に何だか物忘れとかがひどくなってきただけなのか、という話もあるのだけれども。

でも、いまだに新譜が面白い、という状況はずーっと昔から変わっていないので、それも逆にどうなのかな、という話もあったりする。例えばSharleen Spiteriの「Melody」とか。あの馬鹿みたいに人数が膨れ上がっている日本最大のSNSに於いてさえ、コミュニティのメンバーが15人、という衝撃のバンド、Texasthe greatest hits: texasのヴォーカリストのソロアルバムである。まあ、そんな上記のような状況なので全く話題にならないであろうことは予想できたが、出ていたの知らなかった・・・。しかも奇跡的に我が街で買えたので嬉しくて聴いているが、実はこの3日間これしか聴いていない、と言っても過言ではない勢いで聴いている。Bernard Butlerがプロデュース(1曲だけなんだけど)という話題性でガツンと行っても良いのではないか、という気もするのだがバンドの音とはまた一味違う、実に60年代女性ポップス風楽曲が11曲、コンパクトにギュッとまとまった実に清々しいアルバムである。Texas自体、初期から考えると随分音楽性に幅が出てきて、それに伴い人気も上がり、という歴史を辿ったバンドであるが、その変化していった方向性を担っていたのは彼女の志向だったのかなやっぱり、と思わざるを得ない、見事なポップソング集のアルバムである。DuffyのアルバムROCKFERRYがあそこまで話題になるんだったら、このアルバムも話題にならなければおかしい、というものである。と断言したくなるくらい、年季の入った伸びやかなヴォーカルとTexasでの最大の魅力の大らかに進行するメロディを心行くまで堪能できる大傑作。いや、ここまで思いっきりなアルバムになるとは思ってもいなかったので本当にビックリした次第である。ちなみにTexasでもネタに使われていたが、ここでもやはりゲンスブールネタがあったりして、思わずにやりとさせられるのだった。