このスピードの先へ


何かテレビとか雑誌とか新聞とか色々見ていて、最近とくにいらっとするのは「節約おかず」という料理コーナーだったりする。

それは各媒体によって毛色は異なるものであるが、概ね「このような材料で○○円しかかかっていません!」みたいな感じがフィーチャーされているわけである。それはこの大不況の中だからとてもよくわかるのだけれども、こうなる前にはそんなに日頃皆良いもの食ってたのかよ家で、と襟首掴んで問いただしたくなるくらいに我が家のメニューと酷似していたりするわけだからである。

勘違いしないでほしい。それは我が家がナチュラルに節約おかずで小さく暮らしている現実をまざまざと見せ付けられたから、とかそういうことでいらっとしているわけではない。そうではなく、大体「大根の葉を捨てずに利用」とかって当たり前じゃないのだろうか?大根の葉を細かく刻んでそこにしらすでも混ぜて醤油をかければ長年の我がフェイヴァリットおかずになるわけだし、それ凄く普通だと思ってたし思っているのだが。ということで何普通のことを鬼の首取ったみたいに紹介しているのか、となってくるわけである。

でも結構世の中そういう風な思いに囚われることはある。別に外食とかほんのたまにで良いし、タクシーは高いから最終逃さない限りは(多々あるんだけど)電車とか使うようにしているし、携帯電話だってバッテリーパック無料で交換してもらえるからまだ使っているし。でもそういうことやってるとどうやら買い控えとか世の中不景気、とかいうことの表れとしてフィーチャーされてしまうようだ。ってかどんだけ皆それまで激しく暮らしていたのだ、という話である。

バブル経済華やかなりし頃に贅沢三昧(というかそういう経済状況の中では普通だったんだろうな)だった方々にすれば今のこんな暮らしは不景気特有の、とかなってるんだろうけれども、何だかその泡のおこぼれにすらあずかっていなかったりする、そして20歳過ぎでやっと世の中との関わりが増えた頃には不景気不景気言われてきた世代の私としては、まあこういう暮らしなんだろうなあ、という感じである。だからちょっと違和感を覚えたりするのだろうなあ、上のような節約おかずの話とか、不景気の実例とかに対して。

でもそんな世の中だけれどもMass Of The Fermenting Dregsの「ワールドイズユアーズ」は良い作品である。セカンドミニアルバムに当たる女性デュオの新作である。昨年フェスの小さい小屋で見た時には平和な顔してモッシュしているようなガキ共のせいであまりよく見れなかったのだが、ドカドカに轟音と共に突き進む感じが凄く潔くて、だからこそその前に聴いていたミニアルバムmass of the fermenting dregsの小さくまとまっちゃった感じが余計に残念だったのだが、今作は中尾憲太郎のプロデュースで結構スケールアップしたような作品である。ギターもベースも爆音でドラムスもタイトで、そこに乗っかる不思議なくらいに澄んだ女性ヴォーカルとのバランスがよく取れているし、何よりも前作で感じられた若干のグダグダ感が消えてしゃっきりしているのが良い。もうちょいインパクトあるメロディだともっと良いかなあ、とかもうちょい殺気とでも言うようなものが欲しいかなあ、という気がしないでもないのだけれども、それはそれで今後の楽しみというものであろう。今作には本気で興奮させられるようなギターリフが切り込んでくる曲もあったりして、正面切って好きです、と言える気分にさせられたものである。