Everyone Is Guilty

「俺はこんなにも君(ら)のこと思ってるんだから!」というようなことを言葉に出して相手に言ってしまうのって、どうにもこうにも押し付けっぽくて嫌だなあ、と日頃から思っているのだが。

でも、世の中にはその「押し付けがましさ=自己愛」を「相手に対して直接思いをぶつける」ということと思いっ切り勘違いしている人が多いようで、来る日も来る日も至るところでその押し付けがましさが見られるわけである、この世界では。

そりゃきちんと伝えなきゃいけないことはあるし、そういう場面だってあるのだけれども、逆に言わないで伝えられるそういう思いの方、行動やら何やらで言外に伝わる思いの方が尊いと思うのだけれども、そういう風に考える人間はあれですか、今の競争社会に於いては単なるぼんやりさんとして片付けられてしまうものなのだろうか。

随分人間の生き方ってのも安っぽくなってしまったものじゃのう、と嘆きながら全然安っぽくないAkron / Familyの「Set 'Em Wild, Set 'Em Free」を聴く。前作Love Is Simpleから約2年ぶりくらいだろうか。前作は本当に最高だった。で、レーベル移籍してメンバーチェンジしての新作であるが、これまた、実に、実に最高なのである。彼等の場合、よくフリーフォークとかそういう形容で語られたり、Animal Collectiveと比較して語られたりするものであるが、もうそういった考えは捨て去るべきであって、こんなにもメロディアスで繊細で、それでいて凄く大胆な曲の構成で、しかも大らかで軽やかで、でもよく聴くと異常に凝った音の出入りが大忙しな勢いであって、そんでもって全体として実によくまとまっている、なんていう音楽は他に類を見ないと思うのだ。フォーク的と言えばフォーク的、でもゴスペル的な勢いもあってカントリー風、時にファンキー、でやっぱりサイケデリックな感じと言えばサイケデリックなのである。まあ、色々と面倒くさい分析にも十分耐えられる作品なのであろうが、そんなことよりも聴いて微笑むことの方がずっとずっと似合う、そういう大傑作である。今年の前半を代表する1枚には絶対入るだろうなあ、という風格がビンビンだったりする。