Song For Dan Treacy

しかし4月になってもこうも寒いとイマイチ気持ちの切り替えがうまくできない、というか何だかパっとしないわけである。

で、そういう気分だと何だか世の中楽しくないことだらけだぜ、みたいな気持ちになってきて、先日行ったYour Song Is Goodのライヴの前列で暴れてた平和そうな若い男子の顔とか憎々しく思い出されたり(いやライヴ自体すごく良かったし、別に人それぞれだからどうでも良いことなんだけど)、ツイッターやってて何だか最先端気どりっぽいぜ的に感じてそうなつぶやきばっかしてる人にうんざりしたり(いややってる人全員でもないし、ましてや知り合いにはそういう人いないし、別にどうでも良いことなんだけど)してきて精神衛生上実によろしくない。早いとこ春なら春、ずっと冬なら冬、としゃきっと割り切ってほしいもらいたいものである。宙ぶらりんは一番良くない。

私は極度に割り切り人間なので、どうもどっちつかずで宙ぶらりん、という状態には耐えがたいものを感じる。そんなだから気候の宙ぶらりんにまで影響を受けてしまうのかも知れない。思えば季節の変わり目はなんだかどうも不調だったりするわけで。

しかし何故か音楽とかは割り切れないものが好きだったりするから基本的にはそういう性向の人間なのかも知れない。もしかしたら基本そういう性向なのに変に割り切りが良いから、そこらへんで不具合が生じるのだろうか。人間って奴はなかなかにめんどくさい。

で、MGMTの「Congratulations」を聴く。正直に言うとあんなに話題になった前作とか全然食指が動かず、ちょっと聴いてもなんだかピンと来なかったものである。しかして今回は店頭でかかっているのを聴いて衝撃を受けて所望するに至ったわけであるが、クレジットやら曲名やら見て驚愕した。プロデュースがSonic Boom御大である・・・!且つ、ゲストで参加しているのは元Royal TruxのJennifer Herrema嬢だったり末期LunaのBritta Phillips嬢だったり。とどめは「Brian Eno」とか「Song For Dan Treacy」(!)なんて曲名である。これらを認識した上で購入したのでないところがまたミソ、というか何と言うか己の業の深さを感じざるをえない、というか90年代の血の恐ろしさというか・・・。とまあ、完全に外堀を埋められてしまった状態なのであるが、それら抜きでもこのアルバム、凄く良いのである。想起されるのはLoveにPink Floydの「夜明けの口笛吹き」に10年くらい前の時期のThe Flaming LipsにWeen、という今は一体何年なんだ、という感じの名前ばっかりだったりするのだが、曲がポップでしゃきっとしっかりとしているから雰囲気だけの所謂「サイケ」に終わっていないところが最大の魅力である。シンセの音の層は重厚だし、各音がディレイだのリヴァーブだの異常に凝っていて微妙に位相が変な感じだったり、でかなりこってりはしているのだが、基本しゃきしゃきとピンと背筋が伸びた感じが実に好印象だなあ、と思うのだった。まあ上記の凝り具合はSonic Boom先生の影響大なのだろうけれども。とは言えアルバム全体が、長尺の曲も含まれてはいるが全く長さを感じさせず、あっという間に終わってしまうような印象をこちらに与えているわけで、それはおそらくこのバンドが持つ基礎体力、もしくはスピード感みたいなものが根底に流れているからなのだろう。何だかすげえものと出会ってしまった気がビンビンにする衝撃の傑作。っつーかよく見ればこのジャケもExperimental Audio Research好きにはたまらないものがあるのだった・・・。