No Banker Left Behind

何だかもう夏も終わりらしい。

8月の終わりと共に空も高く、日差しがなくなればここぞとばかりに涼しい風が吹いてくる。そう、もう秋がそこまで来ているのだ。

今年の夏は、うまく言えないのだけれどもなんだか「借り物の夏」みたいな感じだった。生きてはいるのだけれども、何だかどれも全て自分のものではないような、どうせ何かあったらなくなっちゃうんでしょー、じゃあいいじゃーん、みたいなそういう感じでいたらあっという間に終わりつつある。

ぐだぐだに生きているのは別に毎度のことなのだけれども、いつもの夏の刹那感が二割増みたいな、そういう感じであった。何もがリアルではないような、そういう感じであった。そして仕事であっつく(まあ、寒々しいだけなんだけど)空回りしている連中とか見ると何だか、ムカつくとか呆れるとか死ねとかそういう感情よりも、どうせこいつらももうすぐ死ぬのにな、何をあっつくやってるんだか、かわいそうにな、くだらねえ、みたいなある意味諦念みたいな気持ちを抱きながら見ていたものである。まあ、いつも、そういう連中は今すぐ死ねって思ってはいるんだけれども。

でもそんな夏を「俺は生きているのだ」と感じさせてくれたのはまず、キリンの「本搾り」というチューハイキリン 本搾りチューハイレモン 350ML × 24缶である。これはグレープフルーツとレモンがあるのだが、レモンに限る。甘い酒がほぼ飲めない私にとってはこれは夏を乗り切るビール以外の飲料の最高峰であった。震災直後、なけなしの在庫を店頭に並べていた店で初めて出会ったのだが、本気でレモンと炭酸と酒の味しかしないこれは超クールな飲み物である。冷やして売っている店があんまりないのは悲しい限りなのだが、売っている店を発見したら(2店しか発見できなかったが・・・)すかさず帰り道に買って帰宅と同時に開缶、という夏であった。果汁が10%で糖類無添加というのがまた何か身体に良さそうではないか(幻想)。しかしこの液体を身体に注ぎこんだ時には「ああ・・・」的な一時停止状態になったものだ、今日もだが。

他に私に「生」を感じさせてくれたのはカンロの「爽やか、塩ライムミント」という飴カンロ 爽やか、塩ライムミントキャンディ 70g×6袋である。パッケージに「フランスをひとくち」とか書いてあってフランス国旗のトリコロールがあしらってあったりしてなんだかな、という感じではあるのだがこれが本気で未知の味覚で衝撃のキャンディであった。しょっぱい感じもあるのだがそれ以上にミントのスースー感、プラスしてほんのりとした甘さ、というやばい一品である。最初コンビニで出会って衝撃を受け、その後ドラグストアでまとめ買いに走ったのも誰も責められないであろう圧倒的な衝撃、プラス爽快、の飴である。「料理通信」とのコラボ開発らしいのだが、レギュラー製品入り、未来永劫にわたってこの商品が存在することを心から願わずにはいられない最高のキャンディである。キリンの「世界のキッチン」シリーズの唯一の難点が商品の入れ替わりだ、と考える私にとっては結構切なる願いである、と言えばわかってもらえるだろうか。これを口に入れた瞬間には、「うん・・・」的な一時停止状態になったものだ、いつでも。

でも一番生きていたのは音楽を聴いていた時だ。これは別に春でも夏でも秋でも冬でもなんら変わりはない。というか上記2品は「え、アマゾンってこういうのも扱ってんだ?」という驚きと共に紹介しているだけだ、間違いない美味しさのものではあるけれども。Ry Cooderの「Pull Up Some Dust And Sit Down」は底抜けに楽しくって、嗚呼音楽を聴くって幸せで楽しいもんだなあ、としみじみ思わせてくれる傑作である。Nonesuchに移籍してからのRy Cooderのアルバムはどれもコンセプチュアルで且つ面白い作品だったけれども、このアルバムは何だか聴いてて微笑みを禁じえない充実作である。とは言え、何だか歌詞は鋭く現世を抉るようなもので、それはこれまでの作品が過去を扱いながら現世を抉っていたのに、一気にストレートにずばっと切り込んできたようなそういう感じがする。何となくオールドタイミーなアートワークだったりもするのだけれども。それでいて、彼の決して上手くはなく、寧ろとぼけた味わいがあるようなヴォーカルで歌われると、耳に入ってくるのは多幸感、みたいな不思議な感覚に囚われるのだった。スカなノリも、ゴスペルなノリも、カントリーブルーズなノリも全てがここにはあるのだが、決して散漫ではなく(それはさすがのキャリアの成せる技だと思うのだが)グッとRy Cooderという男に向かって焦点が絞られているので安心して聴ける。前述したとおり歌詞はビターだが、何だか聴いているだけで色々煩わしいことを吹っ飛ばしてくれるような、そういう音楽って他にもあるとは思うのだけれどもここまで深く掘られて一周してこちら側に来られると、何だか感動してしまうのだった。8月最後にして最高の出会いを経験できたなあ、と今日もドライカレーを作りながら聴いてはニコニコしてるのだった。