Mother

宅急便を利用すると、大体日時が指定できる。

そのお陰でこの日のこの時間には在宅している、という日時を指定できるからとても便利である。何よりも、帰宅してから不在連絡票が入っていたときの何だかガッカリ感と言うのは結構とてつもないものがあるので、そういったダメージとか二度手間とかを省けるという点に於いて実に画期的なシステムなのである。

しかし、在宅している、というのは逆に言えばそれが届くまでは家を離れられない、ということの裏返しでもあったりする。現に今日の午前中に宅急便の配達日時を指定していたのだが、大体いつもは朝もはよから届くものである、と高をくくっていたらば一向に届かず大いに気を揉んだものである。

私の予定としてはあっさり宅急便を受け取る→買い物に行く→客人を招き入れる→さらに遠方に買い物に行く、という感じだったのでいきなり出鼻をくじかれたようなものである。否、もっとゆるりと予定でも立てておけばそうもならなかったのかも知れないけれども、どうにもね、休日だと変に予定を立てたがる傾向があるのである、私には。病気ですか。

ということで午前中は在宅していたのだが、在宅と一言で言っても家にいたところですぐに玄関先に出られる状況にあるとは限らない。昨日はあまりの眠気のために入浴せずに就寝してしまったので風呂にも入らなければならないし、人間の生理現象として不可避なことにお手洗いにも行かなければならない。

ということを考えると家にいるのに物凄く行動を素早くしなければならない、という強迫観念に襲われてしまって風呂はシャワーのみで烏の行水を上回るスピードで済ませ、トイレに行くときですら物凄く戸外に耳を澄ませ、トラックのエンジン音が聞こえないことを確認し実に落ち着かない気持ちで用を足す、というめっちゃくちゃ緊張感に溢れた午前中を過ごしたものである。病気ですか。

まあ、そういうテンパった時にはラッキーなことに荷物は届かず、あまりの緊張感にぐったりとしてしまって、ぼんやりと音楽を聴きながらお茶を飲んでいる時とかに届いたから良かったものの、でも在宅なのに不在連絡票、とか入っていたりしたら多分自殺してしまいそうなくらいに凹んだであろう。やっぱり病気ですか・・・。

Stephin Merrittの「Eban & Charley」を聴いていたのだった。The Magnetic FieldsとかThe 6ths、その他諸々名義でも活躍の彼が個人名で担当したサウンドトラックである。映画の方は未見であるが、ゲイ、しかも年の差のあるカップルの模様を描いた映画(という大雑把な感じの把握でよろしいのかなあ・・・)らしい。で、彼の手がけたサントラと言えば名作『エイプリルの七面鳥Pieces of April(映画自体も面白かった)があったりするわけだが、あれはThe Magnetic Fields等、彼のユニットの既発の曲が多かったわけである。しかし、今作は書き下ろしとトラディショナル曲のカヴァー、という構成になっている。実にサントラらしく断片的なインストもあれば、やはりこれこれという哀愁メロディのエレポップ、宅録っぽさむんむんのギター中心ナンバー、など結構ヴァラエティ豊かだったりするのである、意外と。思えば彼はソロ名義で舞台音楽をやっていたりしてそれはそれは不思議な音楽だったりするわけで、やはり実に多才な人である、ということは重々承知していたものだが、それはこの作品のさらっとやってみましたという風情にも関わらず心に引っかき傷を残していく音楽を聴けば確信に変わるし疑いようもない、というものである。ちなみになんだか霞の向こうから聞こえてくるような「Greensleevs」は(まあ勿論オリジナル曲ではないのだけれども)なんだかどうしても涙なしでは聴けないのである。心を引っかかれたい向きにはおススメの1枚なのだが、これ映像と一緒に聴いたらどんな感じなんだろう、という風に映画自体に自然に興味が向く、という実にある意味理想的なサントラなのである。