Sandman's Song

短冊形のCDシングル、というものがかつてあったわけだが、それについて突如思いを馳せてみたりしたのだった。

きっかけは昨夜スカパーで見ていたなつかしの音楽ヴィデオで流れた小沢健二の「夢が夢なら」である。ぼーとあのサザエさんのオープニングのようなPV(本当はYou Tubeとか貼ればニートなのだろうが、面倒なので各自頑張ってください。健闘を祈る!)を見ながら、あれ、俺これ持ってるよなあ、と思い出しクローゼットの奥から大きなビニール袋を引っ張り出し、そこに収められた夥しい数の短冊CDシングルを大開陳し、整理し始めたのである、夜の11時半に。

もうブクオフなどでは3個100円、とかで売られていた時期があり(最近は短冊形自体がブクオフからすら姿を消してしまっているが)そういう時に勢いで買った奴とかも含めてそれはそれは、非常に新鮮だった。大体自分で持っているのを全く把握していないものがずらずら出てきて、なんでこんなに奥田民生が、とか宝生舞!?とか佐々木ゆう子!?とかL'Arc en Cielだのインスタントシトロンだのフィッシュマンズだの、ぼろぼろ出てきた。ひとしきりうわーうわーと同居人と盛り上がってしまって、思いっ切り夜更かししてしまったものである。Say A Little Prayerとかまで出てきたし、Pizzicato Fiveが結構あったりして、でも一番昨日盛り上がったのはくじらの「ラジオ」とパイレーツのBlondieカヴァー「Call Me」だったりする。ついでに言えば小沢健二のアルバム未収シングルが今聴くと実に良い、ということもわかった。えっと今日眠かったです、はい。ついでに言えば短冊CDですら結構な数手放してしまったものがあることに気づいて、うわー、とかなったりして眠れなかった、というのもある。

ということで、当然ながら自分で買ったりしていたものなのに随分久々に見たお陰で、何だか思わぬプレゼントを貰ったような気分になったのだが、ふと冷静になると果たしてこの短冊CDシングル、というものは何だったのだろうか、という思いで一杯になる。今では全くと言って良いくらいリリースがないメディアであるし、何よりも収納が実に半端な大きさ故に大変である。薄さも割り切れないし、大体「半分に折るとコンパクトですよ」とかいうコンセプトもわからん。我が家には海外の3"CDシングルがThe CureとかThis HeatとかIan McCullochとかあったりするのだが、それは初手から半分サイズのものであって、まあ小さすぎて紛れてしまいがちである、という難点はあるものの、「もともとの形状のままで保管するのがスタンダード」というような感じで安心できたりする。しかしてこの短冊形は。折っても良いし、というのは美品のまま保管しておきたい方々(私も含めて)にはできない所業であるし、かと言ってそのまんま保管しておくと半端すぎて邪魔くさい、というどこをどう切っても「半端」というキーワードを免れることができないような、そういう代物であったりする。

その半端さ故に20年弱でほぼ消えて行ってしまったのかも知れないのだが、いまやCDシングル、と言うもの自体が5"CDシングル(所謂マキシ)であっても風前の灯のようなものになりつつある昨今、もしかしたらCDの幸福な時代の遺産、としての意味があるのかも知れなかったりする。でも、そんな後ろ向きな意味を付与してもしょうがないので、整理も終わった今、積極的にこの謎の我が家の短冊CDアーカイヴを聴いていこうと思ったりした。

ところで昨夜気づいたのだが、意外にアルバムに収録されていない曲、ヴァージョンが結構短冊形で出ているのである。あの激名曲esrevnocの「恋に恋して泣いた」とか5"でシングルヴァージョンが聴けなかったり、Hal From Apollo '69の「Rokket Khaos」なぞ曲自体聴けるのか怪しい。紙ジャケだのSHMCDだの別にもう良いから、こういうのをきちんとですね、とか書きかけて、あ、ニーズがないのかも、と寂しい思いに駆られた。お寒い世の中だのう・・・。

Anne Briggsの「The Time Has Come」を聴いてあったまろう。英フォーク界に於いてはかなりの名作として名高い、1971年リリースのセカンドアルバムである。時代的にも色々な感じでフォークロックとかに寄って行く道もあったであろうが、アクースティックギター1本のバッキングで、実にトラディショナルな色濃いメロディを歌い上げている。とは言えぼんやり聴いてそう思ったのだが、大体が彼女のオリジナル(Bert Janschとの共作もあったりする)だと気づいてちょっと驚いたりした。こんなにトラッド色濃いメロディが実は40年程度前の曲だったとは。そこら辺からもなんか時代とは関係ない姿勢が伺い知れるものだが、セールス的にはやはり駄目だったようである。しかし、だからこそ何十年も経った現在でもその曲群は瑞々しい魅力をたたえているのであり、そこら辺も名作たる由縁なのではないだろうか。彼女の凛とした歌声もジャケ写そのままのような、すっくとしっかり立っている歌声で何だかこちらもしゃきっとさせられる。何だか今月はBridget St. Johnだのを体調不良にせいもあって正月早々ガンガンに聴いていたことも影響してか、こういう音を欲しているのかもなあ。