Lovemachine

またしてもご無沙汰です。

最近、草食系男子、という言葉をよく目にする。何事にしろストレートには進んでいかず、何かレンズを通過する光のように屈折してしまう(しかもその光の速さには追いつく術すらないスピードで進む)私の考えでは最初、「あ、それは俺のことだ」と思ったものだった。つまり、完全にヴェジタリアンとは全然言えない、肉も食べるし好きだけれども、とくに家にいる時には野菜ばっかり食っている私のような男子のことだろう、と思ったものだった。男と言えば肉食ってるイメージが強いのだろうから、敢えてそのイメージを覆すように草を意識的に沢山食べる男子(草を食べる、と言っても私はマリワナをスモークとかはしないのだが)のことだろう、と思っていた。遂に俺の時代が来たものだ、と思っていた!

そしたら違った。何だか異性をがつがつと求めたりしない男子、とか恋愛に消極的な感じの男子、らしい。wikipediaって便利である。しかしなんだよそれ、くだらねえ、とか(例えばmixiのニュースのトップ近くに必ず載っている「合コンの極意は?」とか「自分に気があるな、と感じる女の子の仕草は?」とかに感じるものと同じくらいに)思ったものだが、まあ昔から人のことを何かと分類したがりなものかも知れないな人間は、とふと思い至ったら何だか面白くなってきた。

最近血液型でがっつり人間のことを「あなたはこういう人間ですよ」みたいに書いた本が(あ、最近でもないか)人気を博していて、私も立ち読みしたものだが、何だかああいうの読んで喜んで、しかも他人のことを「あーA型だからね」とか言い放つ奴の気が知れなかったものだが、それって実に人間らしい行いなのかも知れない。あらゆるたまたま同時に起きたようなことをまとめて何かとグループ化したがる生き物なのかも知れない。それの日本に於ける最新版がもしかしたら「草食系男子」なのかも知れない。そうか、実にこういうグループ化はナチュラルなものなのだな、うん。

と納得してみたが、同時にそういう風にいろいろ分類されてしまうことによって何だか安心してそのカテゴリー、というかグループに落ち着いているような輩が多いような気がするのだが気のせいだろうか。もしかしたらこの寄る辺なき現代に於いて、少しでもどこかの「中」にいたい、という志向が世の中強まっているような気がするものであるが気のせいであろうか。

まあ、単なるいちゃもんに過ぎないし、別に自分にも関係ないものだからどうでも良いと言えばどうでも良いのだが、何か程度はどのようなものであっても結局まとまってまとまって全体主義、みたいな感じになっていきそうな、そういう気もするのだが単なる妄想だろうか。

どうやら私もA型の典型っぽいらしいし、いやそうじゃないんじゃない?とか言えば全力でいいやA型の典型だ、とかって誰にでも当てはまりそうなことをつらつら挙げられて「A型の典型」の枠に押し込められそうになるから、これでは結局世界中から戦争はなくならないだろうし、核実験だってなくならねえだろうなあ、とか思うのだった。

虫の居所が悪いって?まあそうなんだが「Disco Deutschland Disco」を聴く。Marinaレーベルからリリースされた1975年から80年辺りまでのドイツ産のディスコソングをコンパイルした、何だか面白い1枚である。ドイツでディスコ、とか言う言葉を聞くと自然にGeorgio Moroderでミュンヘンディスコ、程度の浅い知識しか持ち合わせていない私としては、そしてここに収められている方々もAmanda LearとPeter Thomas Orchestra程度しか存じ上げていない私としては、ほほう、と思って聴いている。これがなるほどさすがドイツ!なるほど硬質でガシガシだぜ!とかなればもっと面白いのだがそうも行かずに、何か凄く良くできたフィリー風のディスコナンバーとか、ベースが唸りまくるファンキーなナンバー、とかの連発で実を言うとあまり「ドイツならでは」という気がしないような気がするものだが、それこそ上記のように「当てはめたがる」からなのかも知れない。だからもしかしたら普通にこの時期のディスコナンバーとかが大好きな人で良く聴いている人ならば別に何ら面白みがないのかも知れないのけれども、私のような思いっきり門外漢のような人間が突然聴くと実に新鮮でかなり楽しめる。ここに収められているナンバーは何だか、別にたまたまなのかも知れないし、もしかしたら全世界的にそうなのかも知れないのだけれども、健康的でありながらもどこか後ろめたさを感じさせるような、そういう若干爛れた香りを漂わせていて、ちょっとそういうところに凄く惹かれたのであった。とは言えこのアルバムの冒頭、Su Kramerの「You've Got The Power」の畳み掛けるようなメロディといきなり流麗なストリングスの絡みとサビの連発は物凄く強烈過ぎて、この曲(最後にも収められているのだが)にガツンとノックアウトされてしまって、そのノックアウトされたままこのアルバム全部聴き通せてしまったりするから、何だか物凄いキラーチューンなのかも知れない。このキラーチューン(マジで殺されるくらいの勢いはある)だけでも聴く価値は激アリ、だと思うのだが。