Earth Horns With Electronic Drone

ところで食欲がない時などは、食事の際にゆったりとした曲をかけたりすると食欲増進の効果があるらしい。

かと言って大音量で聴いてしまうと身体の中のビタミンが破壊されたりして、逆にストレスを抱え込む結果になるらしい。

と言うことはまず、私など食欲あり過ぎで寧ろ困る具合なので速い曲を食事の際に聴けば良い、ということになる。

そして上記のように大音量では身体に悪い、ということはつまりDead KennedysとかThe BuzzcocksとかNaked Cityとかをごく小音量で聴けば良い、ということなのだろうか。

なかなかに健康を維持する音楽の聴き方というのは難しいものであるが、Yoshi Wadaの「Earth Horns With Electronic Drone」を聴く。こういうのは身体にどのような影響を及ぼすのか・・・。一昨年辺りからCDでの再発が活発な彼の、74年のライヴ音源の初音盤化である。アナログでは3枚組で完全版、CDでは1枚ものでダイジェスト版、となれば何が何でもアナログで買うしかねえじゃん、ということなのであるが、これがアナログ6面に渡ってほとんど変化のない通奏音が延々鳴り響く、という困った代物でかなり最高であった。彼のお手製のパイプホルン(形はアルペンホルンのようなものだが、かなりジャンクな趣きが)4本と電子音による演奏で、どの音も互いに倍音の和声になっているのでずーっと響きが一定である。だから延々延々同じ音の響きあいがここには収められているのである。この時期の彼はLa Monte Youngとかなり親交が深かったようなので、思いっきり彼の影響もあるのだろうけれども、アナログで2時間42分、このドローンが延々続く様は一言、圧巻、である。息を吹き込むタイミング等の変化くらいしか(あとは物音とか)起こらないのだけれども、寧ろ何も起きないままこのまま続いて欲しい、と心の底から思ってしまうような、危険な音である。爆音にして聴いていると何だか部屋の、音を鳴らしている場所からではないところから音が聴こえてくるような、そういう感覚に陥ってしまい、まるで部屋全体が共鳴しているかのような錯覚を覚える。ということで、爆音にしても身体には悪い影響もなく、また食欲にもさして影響はないようで寧ろ快適な生活を営む背景の音、とでも言える作品。とか言ってこのまま聴いていたら明日あたり体調崩しそうな、そういう危険な匂いも感じられるドローン音楽である。あくまでライヴでのドローン、というのが実に心地よかったりするのだけれども、それでもやはり何だか麻薬的な表裏一体の天国と地獄の感じられる作品だったりする。ちなみにアナログはかなり入手困難になっているみたいなのだが、CDでも多分十分に体験できるであろうということは付け加えておきたい。