Baptize Me

また蚊に刺されて、たった一箇所刺されただけ、しかも右手の中指の付け根辺りを刺されただけなのに右手がドラえもんの手みたいに腫れあがってしまって、病院に行ってクスリは処方されたものの、大変に難儀している。

昨今、「失業保険が切れた」だの「就職活動がうまくいかない」だの、そういうわけわかんない理由だけでガソリンに火をつけて人を殺したり、殺しそうになったりとかいう野郎が多い。せめてお前等のそのくだらねえ衝動を「蚊を殲滅する」とかそういう衝動に向けてもらいたいものである。何故そういう風にならないのか。

また、今憎むべき敵はウイグル族でも漢族でも日本の政府でも(勝手にひっくり返るのだから)なく、蚊である。パンパン(手を打つ音)、みんな早く目を覚まして!蚊をやっつけるために団結しよう!

と蚊に刺されただけで、ここまで考えというのは巡るものである。ということで蚊に対する憎悪を募らせながら「Take Me To The Water」というコンピを聴く。何だか20世紀初頭辺りの音源を徹底して豪華エディションでリリースするDust To Digitalレーベルの最新コンピである。とは言え、これは写真集にCDが付いているのか、CDに写真集が付いているのか、イマイチはっきりしない、そういう勢いで豪華な一品である。今作の写真のテーマは洗礼式、なのであるが、水をかけるのではなく、川や海にじゃぼじゃぼ入って皆で洗礼を受ける、というテーマのものである。見ると正装した男女が皆で腰まで川に使っている写真が次から次へと75ページのブックレットほぼ全体に渡って掲載されていて、何だかパッと見、実に不思議なセピア色の光景である。聖水をかける、とかそういうものではなく皆でじゃぼじゃぼと水に入って、という光景は不思議だし、一種異様なものであるが、何だか美しい光景のようにだんだん見えてくるから実に不思議なものである。で、CDの方もゴスペルの嵐で、挙句の果てには司祭の説教のようなものまで収録されている。さー、というノイズの向こうから力強い歌声やら説教やらが聴こえてくる、それだけでも十分に面白いのだが写真を眺めながら聴くと何だかより一層説得力を増すものである。Nina SimoneやJulie Driscollやらで御馴染み「Take Me To The Water」(タイトルにもなっているが)やらFine Young CannibalsやらMavis Staplesで御馴染み「Wade In The Water」などが何ヴァージョンも入っていてそれら楽曲に強烈にオブセッションを何故だか感じている私としては大変に楽しめる1枚である。否、まとめて一冊、と言うべきなのか。まあ、写真集プラスCDとしてもCDプラス写真集としても、どちらの解釈でもとても楽しめる1作である。しかし最近こういうゴスペル(と大雑把に一まとめにするのもいかがなものか、と思うのだが)が凄く自分にしっくりと来て、何だか自分でも不思議なのだけれども。