Cross

しかし日々、「あーあれ聴きたいな」とか言って棚の前に座って汗をかきながらレコード探したり、もしくは机の下にある(我が家の)新入荷CDから聴きたいの探したり、とかする人種というのはそろそろ絶滅の危機に瀕しているのだろうか、とかたまに思ったりする。

でも、意外にそう思っている人は多いようなので、多分本当に絶滅などしないであろうことは、少なくともそういう感じの我が友人の数を思えば思いっきり明白なのだが、時折ふと頭をそういう思いが掠めたりする。

大体もしかしたらCDとかがプレイヤーの中で回っている、とか思ったりしない世代もいるのかも知れない。見えないから。それが長じて音楽というものが、ソフトという形あるもので売られていることに不思議を覚える世代だって出てくるかも知れない。そうなってくるともう本当に、何を拠り所にして生きていったら良いものか、と旧世代の人間としては思わざるを得ないのだった。

と目の前のターンテーブル上で回るCornelius Cardewのレコードを見て、そしてさっきスカパーでPVを見た、20世紀最高の名曲の1つ、Dead Or Alive「You Spin Me Round ( Like A Record )」のことを思い出しながら考えた。大体「レコードみたいにお前は俺のことをクルクル回す」とか歌われても、もうピンと来る世代が少なくなってきているんだろうなあ。え、回るの?何が?ってなもんだろうなあ、と。

悲しい、とかそれではいけない、とか、めんどくさいオヤジみたいなこと言う気は毛頭ないのだけれども、それらを否定しないのと同様に私の楽しみが今後も存続していって欲しいなあ、と切に願うばかりである。だからJames Blackshawの「The Glass Bead Game」を聴く。まだお若いのに12弦ギターのフィンガーピッキング名手として名高い彼の新作である。まあ、Young Godレーベルからは初のリリースとなる作品である。実は寡聞にしてこれまで彼の作品を聴いたことなかったのだけれどもCurrent 93の新作に参加していることもあってちょっと聴いてみた。全4曲でチェロやヴァイオリン、ピアノ、女声などが曲によっては入ってくるが、中心にドンと鎮座しているのは当然ながら彼のギターである。なんでも他の楽器が入っているのは初らしくて『WIRE』誌ではちょっとイマイチ、という評価であったがこれはこれで、まあ初めて聴いたからなのかも知れないのだが凄く良い。何か幽玄な感じが全体を貫いていて、そして感触としてはSylvain Chauveauのピアノメインのアルバムに近い、そういうワビサビ感がかなりある音である。明快なフレーズがあったりするわけではないのだけれども、細かいフレーズの連発はさすが若き名手、と唸らせられる。なんか、クラシカルな感じが色濃くて、若干浮世離れしたあたりもまた、唯一無二だなあ。