Fail We May, Sail We Must

そういえば『スタジオ・ヴォイス』誌が休刊、ということで最終号を買って読んでいた。

思えばこの雑誌との出会いはもう15年くらい前なのだろうか。何だかたまたまハタチ前後に大学の生協で見かけてたまたま買ってみたくらいで、後は時たま買って読む、それくらいの付き合いではあったが一応毎月、最新刊が出ればチェックは必ずしていたように思う。

しかし、今回の最終号を読んで変わらず思うのは、相変わらず読み辛い、ということであった。背景の色と字の色がぶつかっていて全く読めない箇所とか、レイアウトが変でなんとも読み辛い、というのは毎回毎回思うことであったが、やはりその印象は変わらず、であった。そしてどんなに面白そうな特集でも結局「で何を言いたいんだろ?」という感想しか持てない雑誌でもあったのだけれども、それもやはり今回も、であった。あ、今回はそうでもなかったか、2000年代総括、だったからある程度はっきりしていたような。でもどっちかというと、2000年代に失われたもの特集、みたいな感じで読み進めるうちに何だか辛くなったりしたが、まあ良い。

あ、あくまで個人的な印象だし、多分私があんまり世の中のこと詳しく知らないからそう感じるだけであって、人によっては毎回毎回、刺激を受けていたことと思う。でも、実際休刊、という話はリニューアルした直後だったし何だか衝撃を受けたものである。本当に雑誌ってこれからどうなっていくのだろうか。雑誌ならではのもの、という形だったら必ず残っていくものだと思うのだけれども。

本とか雑誌とかがなくなっていく世の中ってそんなにロクなもんじゃねえよな、とか思うのだが、そう思うことすら旧来の価値観の賜物、なのだろうか、CDとかレコードが良いよな、と思うことと同様に。いずれにせよ、やっぱり年寄りの意見であろうが何であろうが、やっぱりロクなもんじゃねえな、と勝手に自分内で結論が出たところでAndrew Weatherallの「A Pox On The Pioneers」を聴く。Sabres Of ParadiseとかTwo Lone Swordsmenとかその他様々な名義で活動していた彼の、ソロ名義では初のアルバムである。近年のTwo Lone Swordsmenのムチャクチャなロックンロール回帰的作風には、初期のダークなエレクトロ路線と同じ人がやっているとは思えないぐらいにバンド然としまくっていたので度肝を抜かれていたが、このソロ名義初のアルバムもある程度その同じ路線である。しかし何だかひたすらヒリヒリしていたTwo Lone Swordsmenの最近の2枚(3枚)の作品From The Double Gone Chapelロング・ミーティングスとはまた一味違い、メロディアスな展開も含めて結構良い意味でバランスの取れた、ポップとでも言えそうなアルバムになっている。彼のヴォーカルも結構こなれてきたのか何だか凄くしっくりと来るようになっているし、生楽器と打ち込みのバランスも良く、そして今までとは違いギターの音色や全体的な空気感が80年代〜90年代的な加工具合になっていて凄く耳に優しい。しかしそれでいても、どんなに曲のメロディが明るく開放的なものが増えたにしても、やっぱり地を這うようなダークな世界というのは相変わらずで、何だかどんな作風の作品を出すにしてもやはり信頼に足るなあ、としみじみ思った次第である。まあ、とにかくベースの音がぶっとくてそこら辺は彼の一貫したダブからの影響、そしてそれへの愛情の表明なんだろうなあ。ちなみに曲によってはLove And RocketsとかDaniel Ashのソロとかを思い出させる展開があって(というかヴォーカルがDaniel Ashっぽいのか・・・?新発見である)何だか不思議な気がしたものである。Primal ScreamのBobbieさんが参加しているのも当然と言えば当然であるが、彼等の20年近くに渡る関係を考えると何だかグッとくる良い話である。