It Didn't Matter

今月はAOBA NU NOISEがお休みなので、なんだか生活のリズムが狂ってしまったのか風邪気味なのである。

冬は寒いもの、と今のところは相場が決まっているのでしょうがなのであるが、寒さが堪える。結構堪える。おかげでなんか鼻水が出続けたり、ちょっと咳が連続したり、となかなか地味に波状攻撃を受けているようでなんだかちょっと調子が狂う。だから風邪薬を飲んで最近寝ているのだ。

そうすると眠りは深くなってるはずなのに物凄い勢いで夢を見る。しかも別に突飛な、いかにも夢らしい夢とかではなくて現実に起こりうる、そういう夢ばっかりだから大変なのである。以前、実は夢界の方が本当の世界で、現実と我々が思いこまされているこの世の中は実は夢界(=本当の世界)で我々が見ている夢なのではないか、という説を私は唱えたものであるが、その思いを新たにするような事態である。

ある夢では私は朝起きていて、朝の食卓で同居人からのいびきがうるさかったよ、しかも歌ってたよ、という証言を聞かされて、あー確かにAntony見てきたばかりだからああいう歌声で歌っていたかもなあ、ごめん、と謝っていた。その夢は全く夢のようなものではなく実にリアルであった。しかしその体験の次に私の記憶にあるのは私はまだベッドで寝ていて、仕事に出かける同居人に布団をかけなおしてもらっている、というものだった。食卓での会話が夢だったのか、それとも布団をかけてもらった方が夢だったのか、はたまた両方が現実なのか夢なのか、かなり混乱した頭で朝を過ごしたのは言うまでもない。なんだか夢(と我々が思っているもの)がリアルな色彩を帯びすぎていて、逆転してしまうのももう時間の問題なのではないか、という思いを強くする次第である。

まあ今生きている現実の世界が夢ならば、悪い夢だから早く覚めて欲しい、と願うばかりの日々であるが、The Style Councilの「The Cost Of Loving」を12インチ2枚組の体裁で聴いている。87年のサードアルバムである。リアルタイムでこのフォーマットで購入していたのであるが手放してしまい、最近安価で発見してもらったので聴いていた。実を言うとPaul Wellerには思いいれがない私であるが、スタカンは別なのである。多分リアルタイムで聴いていた、というのがでかいのだろうが。このアルバムも名作の誉れ高い「Our Favourite Shop」アワ・フェイヴァリット・ショップ(紙ジャケット仕様)の後の作品、ということでかなり分が悪かったのかも知れない。当時よりも今聴いたほうが全然良く聴こえる。件の「Our Favourite〜」がジャズやらボッサやら何やら、むちゃくちゃに多様な音楽性をポップなメロディと多分に風刺の効いた政治的な歌詞やら何やらでまとめあげた作品だったが、今作はかなりソリッドなアルバムに仕上がっている。この時期は4人でスタカン、的な打ち出し方をしていたわけで多分そのようなグループ的な作品に仕上げたかったのであろう。Curtis MayfieldやThe Valentine Brothersがミックスを手がけ、Anita Bakerのカヴァーが入っていたり、とThe Jam時代からのPaul Wellerソウルミュージックに対するオブセッションを極めた作品、という見方もできるわけでなんかこのボトムがしっかりした(音質的にはそうでもないのだが)感じも大いに納得がいく。まあ地味と言えば地味な部類の音楽であるが、それ故に今聴いても鈍く渋い光を放っている作品、となっているのである。この後スタカンは迷走してしまうわけで、このがしっとまとまった感じ、というのは後にも先にもないのだった。そう考えると何だかしみじみとしてしまうのであった。意外に全曲名曲なのだこれがまた。