There's No Other Like My Baby

さて2011年もそろそろ終わろうとしている昨今なのだが、まだテレビが地デジ化されていないのである我が家は。

我が県は被災地なので地デジ化が猶予されて来年の3月末まで地アナでオッケー、なのである。もう大体周囲は早々と震災以前から地デジ化が進んでいて、地デジ対応テレビが薄型だから高い所から落ちて、という被害も多かったと聞く。我が家もあの地震の次の日は、テレビ落ちてるのかなあ、遂に買い替えのタイミングなのか、とか切羽詰まった状況の中考えていたものだが、全然無事であった。ブラウン管テレビの厚みは強い、のか。

しかし何か買い替えテンションが上がらない。我が家の集合住宅、っつーかアパートは共同アンテナなのだが我が部屋へ入ってくるテレビの電波(だかなんだか、よくわからん)の力が弱いらしく(何だかわかってない様がありありとわかる感じ)、映りが大層悪いからいまだに室内アンテナで地上波を受信しているのである。だから地デジ化する前に大家に連絡、とかいうのがまずめんどくさい。

と言うよりも、テレビというものに関してかなりテンションが上がらないから買い替えの腰が重い。今私が能動的に見ている地上波の番組はお馴染み「ぶらり途中下車の旅」くらいしかない。一応「がっちりマンデー」とか「11人もいる」とかも見ているのだが、かなり受動的、というかお付き合いな感じだし、どれもこれも全て結局録画して見ているし、見られなかったら見られなかったでしょうがないか、程度の感じである。だからもし地上波見れなくても意外に良いんじゃね、って感じである。あ、ここまで書いて思ったが阿藤快とか小倉久寛の出てる回の「ぶらり〜」は見逃したくはないな。んー、まあ、ないならないでなのかなあ、とか。

いやね、替えちゃったら替えちゃったで凄く良くなるであろうことは容易に察しがつくし、いずれは替えることになるのも明らかではある。でもその一方で、もうテレビはスカパー専用のモニターでも良いんじゃね、と思っている自分がいるわけで。こんな全国的にも今のタイミングで言っている人間も超レアだと思うんだけれども、地デジ化はファッショじゃね、とか日に日に強く思っている私なのだ。

別にテレビを見ないわけではないんだけれども、いつからこんなにテレビと遠い関係になっちゃったんだろうか。そうだ、多分実家の我が部屋にはテレビがなく、当然部屋にこもって音楽聴いてたら疎遠にもなるわなあ。だから今、私は実家ではないけれどもやっぱりテレビが置いてある部屋とは別の部屋でThe Crystalsのベスト盤なんか聴いているわけだし。彼女たちの「He Hit Me ( It Felt Like A Kiss )」という曲が大層好きだったがなかなか聴く機会がなかったものの、Phil Spector再発ブームに乗って新たにベスト盤が出て私は嬉しい。ということで彼女たちの61年から63年の間の楽曲がキュッと収まったこのベスト盤は明快なメロディと綺麗なコーラスハーモニー、これぞポップス、という感じの実に楽しい時間が過ごせること間違いなしの最高の1枚である。しかし、Phil Spectorのキャリアの初期からがここには収められているわけで、最初の方は実にバックもシンプルで過不足ない感じで収まっているのである。でも、カスタネットとかタンバリンの音デカイなぁ、程度なのだがみるみるウチに、62年、63年くらいの音源になってくるとマジで「壁」が出来ている。厚過ぎてもはや何が鳴ってるのか曖昧なくらいの「音の壁」が彼女たちの歌声の後ろには構築されていっていて、この進化の具合には舌を巻く。でも曲は実に明快だからオブスキュアにはなっていないのでポップスたりえている、というか逆にその対比が凄くビザールな感じがするのだが。ところで彼女たち、と書いたのだが今回のライナーを読んでいたら、全く違う女性歌手(Darlene Loveらしい)に歌わせてそれをThe Crystals名義でリリースして、ツアー中の彼女たちが自分たちは全くレコーディング参加していないのにラジオで聴いてビックリ仰天、という衝撃のエピソードには度肝を抜かれた。すげえ・・・、鬼畜だPhil Spector・・・。でもプロデューサーたるものそれぐらいがっついてガンガンやらなきゃいけないのか・・・。私ももしAKBだののなんとか48な奴らのプロデューサーだったら、本人たちには激しくツアーさせてその間に全然関係ない連中連れて来てオートチューンででも加工してレコーディングしてリリースして、本人たちは口パクでライヴさせてガンガン稼いで、とか夢想したりしたのだが、もしかしたら既に実はやってるのかもなぁ。でも、そんなハリウッド・バビロンなことはこんな高度情報化社会の2000年代に於いて、ネットの炎上とか招かずに可能なんだろうか。昔は良かったなあ、と間違ったベクトルで遠い目。ちなみにこのベスト盤にはアーティスト名を意識していなかったのに何だかんだ言って知ってる曲がかなり散見されておおっと思った。やはりバビロンでも鬼畜でも、こうしてちゃんと後世に残るものを生み出しているのだから、勝てば官軍なのかPhil Spector。でも本人は監獄の中、というのがまた・・・。

ところで「He Hit Me ( It Felt Like A Kiss )」ってタイトルはSpiritualizedに「She Kissed Me ( It Felt Like A Hit )」Amazing Graceってのがありましたね、って想起させられるし、何だかDV的というか若干倒錯した感じ(それほどでもないと思うけど当時物議を醸したらしい)はAntony And The Johnsonsの「Fistful Of Love」I'm a Bird Nowみたいね、ってつらつら書いてたらこの「He Hit Me〜」のwikipediaにはしっかりと両者に関してリファレンスがあって、高度情報化社会ってすげえな、というかいろいろ俺の発見だ!とかドヤ顔になれることってもう少ないのね、と痛感。皆謙虚になろう、と無茶苦茶なまとめでも良いですか。